こうした危険な攻撃はロシア指導部に恥をかかせる以外、たいした成果をあげなかった。少なくともこれまでは。
既報のとおりウクライナの部隊は7日、ウクライナ北部スーミ州から国境を越え、ロシア側の防御の隙をついてロシア南西部クルスク州の町スジャに侵入した。この部隊はウクライナ陸軍の少なくとも2個の旅団で、当初言われていたロシア人義勇兵組織の再襲撃ではなかったようだ。
第22独立機械化旅団や第88独立機械化旅団に所属する総勢数百人(編集注:ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長はウクライナの攻撃部隊の規模を約1000人と報告している)の兵士らは8日、大砲やドローン(無人機)、防空システムの支援を受けながらクルスク州で15kmほど進軍し、現地のロシア部隊を潰走させ、スジャや周辺の複数の村を制圧した。
これは、1年にわたり守勢に立たされてきたウクライナ軍にとって驚くべき戦果だ。ウクライナ軍は、ロシア軍が大きな損害を出しながらも執拗に続ける攻撃を東部の戦線全体で食い止めるため、十分な兵力を動員するのにも苦慮してきた。
ウクライナ軍は東部の最前線の村落や都市を守備する旅団に十分な人員を充当できず、ドネツク州の残りの支配地域を保持する努力に深刻な影響が出ている。それにもかかわらず、ウクライナ軍は2個以上の旅団をスジャへの攻撃に投入した。この攻撃で得られるものは、失うものより価値があると判断しているということなのだろう。
フィンランドのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)グループ、ブラックバード・グループのウクライナ専門家、ジョン・ヘリンは「ここでの目的が何なのか、まだよくわからない」としつつ、こう述べる。「信憑性は低いが、ウクライナ軍はこの方面に2〜4個旅団の部隊を集結させているという報告もある。これらの部隊が切実に必要とされているのは東部のはずだ」