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ビジネス

2024.08.09 13:45

完璧はつまらないから。ピクサーCCOに聞く「シンパイ」との向き合い方

──「直感」を鍛えるためにしていることは?

確かに直感というのは、何度もトレーニングをして学んで得られるものだと思う。映画づくりに関しても、何度もテストをしながら、本格的な制作に入る前にイメージを視覚化して調整をしていくことが欠かせない。これは映画だけに関わらず、ビジネスにも通じるように思う。誰かに話すまでは、素晴らしいアイデアだと思っていても、話したときに違和感を覚えることもある。

──チームに最大限のクリエイティビティを発揮してもらうために、リーダーとしていちばん気をつけていること、大切にしていることは何か。

私も学んでいる最中ではあるのだが、私が監督やチーフ・クリエイティブ・オフィサーという仕事をするなかで常にやってきたことのひとつは、あるシーンを描いてもらうとき、どんな「感情」が必要なのかをスタッフに伝えるようにしていることだ。

例えば、モンスターを描くときに「これは赤いトゲトゲが出てくるような絵にして」と具体的な指示をすると、アーティストの創造性を奪ってしまうことになる。そうではなく、「これは危険な感じで」とか「ここには恐怖の感情で」と伝えることによって、観客の感情を揺さぶるようなより良い仕事を、それぞれのアーティストから引き出すことができると思う。映画の目的は観客に何かを「感じて」もらうことだ。感情的な意図は具体的に、細部は曖昧に伝えるほど、みんなからより良い仕事を引き出せる。

しかし、それは決して簡単なことではなくて、実際に何かつくってみてからでないと自分が本当に何をつくりたかったのかはわからない。それを深く知るためだけに、自分で脚本を書いてみて、捨てるという作業をすることもある。

とにかくアウトプットしてアイデアを磨きつつ、自分が本当にやりたいこと、求めていることを理解していき、それを相手にきちんと伝えていくことが大切。そうでなければ、より良いものにはならない。
 「エドはトラブルと聞くと笑顔になっていたんだ」とエピソードを話してくれた

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──新しい企画や物語、創造のテーマはどのように考えたり思いついたりするのか。企画を考えるときの「はじめの一歩」はどのような行動か。

とにかくまず、手を動かして何かをつくってみることだ。そうすれば、目の前にできたものを調整してより良く変えていくことができる。nothingをsomethingにする、この「はじめの一歩」がいちばん難しい。

最初のトライは決して良いものでなくてもいい。何かしらのスケッチを描いてみたなら、「ここを変えればいけるかも」と具体的な改善点に気づくことができるだろう。

まずはつくって、自分が本当に求めていることを見出していくというスタイル。そこから「エディターブレイン」(編集脳)に変わっていって、編集しつつ生み出していくということをしている。

『インサイド・ヘッド2』の場合は、監督のケルシー・マンに何かを生み出すというチャンスを与えたいと思った。その上で、作品を最初に見る観客の役割をすることで力を貸したり、監督がその作品の核心を見出せるように支えたりしている。

自分自身が企画を考えるときには、絵を描いたり、脚本や文章を書いてみたり、散歩したり、考えたり、時には誰かと話し合ったり、ひとつの(決まった)方法はない。それぞれにメリットがあるので、いろいろ混ぜてみるのもいい。一人で机に座っていても迷ってしまうだけだ。

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取材・文=松崎美和子 撮影=山田大輔

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