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2024.08.19 09:30

創業のきっかけは娘の難病、トランス女性起業家が目指す未来

マーティン・ロスブラット(Photo by Nicholas Hunt/Getty Images)

その試みがうまくいかないことを知った彼女は、自身でPAHの治療法を探すためにユナイテッド・セラピューティクスを立ち上げて、1999年に収益がまだ5万4000ドル(約780万円)の小規模なバイオテクノロジー企業として6600万ドル(約95億円)のIPOを実施した。
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その3年後、同社は、米国やカナダ、イスラエルで初のPAH治療薬であるレモデュリンの承認を取得した。2022年には、持ち運び可能な吸入カートリッジに入ったドライパウダー製剤であるタイバソDPIの承認を得て、2023年に売上を20億ドル(約2891億円)以上に押し上げた。

ブタの臓器を人間に移植

その一方、2011年にユナイテッド・セラピューティクスは、世界初の哺乳類の体細胞クローンであるドリー羊を生み出した異種移植テクノロジー企業のリヴィヴィコールを買収し、ブタの臓器を人間に移植する取り組みを始動した。そして、2022年と2023年に遺伝子改変を加えたブタの心臓のヒトへの移植に成功し、今年4月には、ブタの腎臓のヒトへの移植に初めて成功した。同社はまた、異種移植の実現可能性をさらに研究するために1億ドル(約144億円)を投じた新施設の建設を進めている。

1994年に性別適合手術を受けたロスブラットは、LGBTQの権利の擁護者として数十年にわたり活動する米国で最も著名なトランスジェンダーのCEOとして知られている。彼女は、2016年にノースカロライナ州の物議を醸すトイレ法に反対したことでも有名だ。

ヘリコプターの免許を持つロスブラットは、米国各地のカンファレンスに自らヘリコプターを操縦して向かうことでも知られ、4つの州に少なくとも8軒以上の家を所有している。
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トランスジェンダーの人権活動家であるロスブラットは、いつか人々がコンピュータで動作するドッペルゲンガー(自分とそっくりな分身)を作り出すと信じている。彼女は、2004年に妻のビナと共にこのアイデアを広めるためにテラセム・ムーブメントと呼ばれる宗教組織を立ち上げた。

これらの取り組みは、ロスブラットが数十年間にわたって行ってきた多岐にわたるチャレンジの一つだ。

「私の娘は、現状では臓器移植を受けるチャンスがないが、将来的には、臓器移植を必要とするすべての人に臓器を提供できるようにしたい」とロスブラットは2016年に述べていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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