市民に対し「生物学上」の性別に基づいた公共施設の利用を義務化する同法は、ジェンダーは男女の二つしか存在しないとの考え方に基づいており、それに当てはまらないトランスジェンダーの人々を差別する内容だ。米司法省は同法撤廃を求め、ノースカロライナ州を提訴している。
トイレ法は大きな反発を生んだ一方で、熱烈な支持も得ている。パット・マクローリー州知事は同法を繰り返し擁護。同州で8日の大統領選に合わせ実施される州知事選では、トイレ法撤回に向けた取り組みを掲げるロイ・クーパー州司法長官が対抗馬として立候補しており、企業幹部や経済学者、そして住民らは、勝敗の行方に注目している。
トイレ法は一方で、ノースカロライナからの企業離れを生み、経済に打撃を与え続けている。
5月には、NBAが同州で予定されていたオールスターゲームの会場をニューオリンズに変更。1億600万ドルの経済効果が失われた。マイケル・ジョーダンも、所有するシャーロット・ホーネッツの本拠地を州外に移す可能性を警告した。
影響は大学スポーツ界にもおよび、全米大学体育協会(NCAA)とアトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)が競技会の会場変更を決定。それぞれ5,100万ドル、4,000万ドルの損失を生んだ。
トイレ法は金融業界の注目も集めている。ペイパルとドイツ銀行は4月、650人の新規雇用、年間4,200万ドルの給与をもたらすはずだった事業拡大計画を凍結。地元紙は、ペイパル撤退による経済損失額を、新規雇用に伴い見込まれていた経済活動分を含め1億920万ドルとしている。
多大な公演収入をもたらす大物音楽アーティストも、次々とボイコットを表明。ブルース・スプリングスティーン、パール・ジャム、リンゴ・スターが、同州での公演を取りやめた。