宇宙

2024.07.21 13:00

謎の天体「暗黒彗星」が地球の水の大半をもたらした可能性

宇宙空間を漂う小惑星を描いた想像図(NASA/JPL-Caltech)

地球の水がどこからもたらされたかをめぐる数十年来の論争が、さらに少し紛糾することになった。地球の水の大部分は「暗黒彗星」によってもたらされた可能性があると、米ミシガン大学主導の研究チームが、学術誌Icarusに掲載された論文で主張しているのだ。

暗黒彗星は、非重力的な(揮発性物質が内部から噴出する脱ガスによる可能性が高い)加速を示す地球近傍天体(NEO)だが、彗星のようなコマはないと、論文の筆頭執筆者で、米ミシガン大学アナーバー校の天文学専攻大学院生でヘルツ特別研究員のアスター・テイラーは、取材に応じた電子メールで説明している。これは、暗黒彗星が表面から氷を蒸発させているが、目に見える雲になるほどの塵(固体微粒子)を失ってはいないことを意味するという。

ミシガン大の報告によると、実際に暗黒彗星は、NEO全体の最大60%を占めている可能性がある。氷を含んでいる(もしくは過去に含んでいた)可能性が高い暗黒彗星は、水を地球にもたらした経路の1つかもしれないと、ミシガン大は指摘している。

テイラーによると、暗黒彗星の存在は、これまで知られていたより多くの揮発性(容易に気化する)物質や有機物が、小惑星帯の内部に存在していることを意味する。軌道を見ると小惑星かと思われるが、非重力的な加速を示すのは、表面から氷が失われていることを示唆しており、この点は彗星の重要な特徴の1つだと、テイラーは説明する。

地球に水をもたらす上で、暗黒彗星はどれくらい重要だったのだろうか。

水を含んでいる可能性が高く、かつ地球の近くにあるため、地球の水の供給源として重要だった可能性があるが、この種の天体がどれくらい多く存在しているか、または過去にどれくらい多く存在していたかについては不明だと、テイラーは述べている。

暗黒彗星と一般的な彗星との違いに関してはどうだろうか。

ミシガン大によると、小惑星は氷を含まない岩石天体で、より太陽に近い軌道、通常は雪線(水などの揮発性物質が内側では気相、外側では固相で存在する境界線)の内側を公転している。これは、小惑星によって運ばれていた可能性のある氷が全て昇華(固体から直接的に気体に変化)するほど太陽に接近していることを意味すると、ミシガン大は説明している。
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翻訳=河原稔

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