宇宙

2024.07.21 13:00

謎の天体「暗黒彗星」が地球の水の大半をもたらした可能性

テイラーの指摘によれば、主な違いは、暗黒彗星が目に見えるコマを持たない(見えない=暗黒である)点だ。

また、暗黒彗星は、より小惑星に典型的な軌道上にあり、一生の大半あるいは全期間を、氷が昇華する宇宙空間の領域内で過ごすという。

ミシガン大によると、今回の研究で7個の暗黒彗星を調査した結果、さらに50~6000個の地球近傍天体が暗黒彗星である可能性があると推定される。つまり、暗黒彗星は、コマがないように見えるが、実際に非重力的に加速しており、これは何らかの脱ガスによるものに違いないと、ミシガン大は指摘している。

ミシガン大によると、テイラーと研究チームは今回の論文で、様々な母集団に属する天体に非重力的な加速度を与える力学モデルを作成。その上で、重力以外の加速度を与えた天体が10万年間にたどる進路をモデル化した。シミュレーションの結果、これらの天体の起源として最も可能性が高い場所は小惑星帯であることがわかったという。

奇妙な地球近傍天体

テイラーによると、暗黒彗星は小型のNEOで、周囲を取り巻く塵の雲がないため、小惑星のように見える。だが、重力以外の加速を示し、これは氷に由来するに違いないと考えられる。非常に高速で自転しているため、ばらばらになるのではと思われるかもしれないが、ほんの少しでも「粘性」があれば十分つなぎ止められることがわかっていると、テイラーは説明している。

暗黒彗星は全体的に、大きさが10~100mと小型で、高速自転している。

このような天体は、より大型の天体が非常に高速で自転する結果として分裂して形成されることが、今回の研究で示唆されている。これが何度も起きれば、1つの天体から暗黒彗星のような天体が多数形成されるという。天体の運動をシミュレーションした結果、大半が小惑星帯の内縁部からやって来ていることが明らかになったと、テイラーは述べている。

はやぶさ2探査機による小惑星1998 KY26のランデブー探査の様子を描いた想像図。1998 KY26は暗黒彗星の1つとして知られる(ISAS/JAXA/Akihiro Ikeshita)

はやぶさ2探査機による小惑星1998 KY26のランデブー探査の様子を描いた想像図。1998 KY26は暗黒彗星の1つとして知られる(ISAS/JAXA/Akihiro Ikeshita)

暗黒彗星は、これまでにいくつ知られているのだろうか。

テイラーによると、現時点で知られているのは7個だ。論文によると、うち6個は地球周辺の軌道距離にあり、残る1つは小惑星帯を横断する、より長い軌道を持つという。

地球近傍の宇宙空間には、完全に揮発性物質が除去(脱ガス)されて枯れた彗星の破片がいくつも散乱している可能性があり、これらは検出が極めて難しい可能性があると、論文は指摘している。

次なる研究課題は?

テイラーによると、暗黒彗星の発見例を増やす必要がある。また、特に太陽への最接近時に、暗黒彗星上で起こる活動を調べることは、天体の化学組成を制約する助けになると、研究チームは指摘している。

この目的のために、2031年に日本のはやぶさ2探査機が、小惑星1998 KY26に到着する。はやぶさ2のこの拡張ミッションによって、暗黒彗星の1つとして知られる1998 KY26の起源と組成に関する科学的理解がさらに深まるはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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