Nature Astronomyで6月16日に公開された最新研究は、地球表面の水はすべて、小惑星衝突によってもたらされたという説を支持する新たな証拠だ。なぜなら地球は火星、金星、水星とともに、太陽の近い場所で形成されたため、水蒸気が凝結して液体の水になるには温度が高すぎるためだ。
しかし、珪酸塩からなるS型小惑星(たとえば、2010年にはやぶさミッションが持ち帰ったこのサンプルの出所である小惑星イトカワ)には、水を含む鉱物はないと考えられていた。
内太陽系にある小惑星のほとんどはS型であるため、水のある小惑星がたくさんある可能性が突然降って湧いた。
アリゾナ大学Lunar and Planetary Laboratory(月・惑星研究所)の研究チームは、はやぶさが持ち帰ったサンプルの中に塩化ナトリウム(食塩)の痕跡を見つけた。
イトカワは長さ約500m、直径約300mのサツマイモのような形の地球近傍小惑星であり、はるかに大きな親天体から剥がれたと考えられている(JAXA) 「ありふれたコンドライト(石質隕石の一種)は地球の水の起源ではありえないと長年考えられてきました」と主著者でKuiper Materials Imaging & Characterization Facilityのディレクターであるシャオファン・チェはいう。彼はあらゆる汚染源の可能性を排除した。「塩化ナトリウムの発見は、この小惑星の母体がこれまで考えられていたよりはるかに多くの水を有していたことを教えてくれました」
この種の小惑星のほとんどは、地球大気の中で燃え尽きてしまい地表に到達することがない。「大気突入を生き延び、地表に水を届けるためには十分大きい岩石が必要です」とチェはいう。
過去の研究は、原始太陽系にあった水分子が小惑星の鉱物内に捕らえられ、地球との衝突で生き残ったとする説を提唱した。「それらの研究は、いくつもの大洋に相当する量の水が、この仕組みによってのみ供給されたことを示唆しています」と本研究の上席著者で、Lunar and Planetary Laboratory惑星科学教授のトム・ゼガはいう。「もし、ありふれた小惑星の多くが、今まで考えられていたよりも『湿って』いた可能性があれば、小惑星による水供給仮説はより説得力が高まります」
サンプルで見つかった塩の結晶は、太陽系が始まった45億年前から存在していた可能性がある。
(forbes.com 原文)