気候変動の影響は、気温上昇だけでなく、霜やブドウの日焼けといった被害をもたらす。また、ワインの味わいやスタイルにも変化を及ぼす。「ブドウ栽培は一度植えたら結果がわかるのが20年後。短期的かつ長期的に将来を予測し、適応していく必要があります」とレカイヨン。
その一手として、ルイ・ロデレールは21年にメゾンの顔であるNVキュヴェを35年ぶりに刷新、新たに「Collection」として発表した。
シャンパーニュには、特定の年に収穫したブドウを100%使用し、ボトルにその年が記載される「ヴィンテージ」と、複数年のワインをブレンドしてつくる「ノン・ヴィンテージ(NV)」とがあり、後者が全生産量の約8割を占める。冷涼なシャンパーニュでは、ブドウがうまく熟さない年もあり、一貫した質と量を供給するにはNVが理にかなっていたからだ。
「それが温暖化により、より成熟したブドウが収穫できるようになり、ワインに熟度よりフレッシュさを求めるようになってきています。この状況を逆手に取り、毎年均一のものではなく、その年の個性を生かしたNVを造ろうとCollectionを考案しました」
気候変動を追い風にする動きはほかにもある。同じ理由で、シャンパーニュではスティルワイン(非発泡性)を造るのが難しかったが、熟度の高いブドウが収穫できるようになり、コトー・シャンプノワと呼ばれるスティルワインを造る生産者が増えてきている。ルイ・ロデレールでも14年から実験的に造り始め、18年ヴィンテージから白と赤をリリースした。
「このワイン造りにはブドウの果皮も使うので、この土地らしさ全てを表現できると考えました。かつてはシャンパーニュもスティルワインの産地でしたので、そのルーツに戻る“新しい”チャプターとも言えます」