22年、この地域の生産者として初めてB-Corp認証を取得したのが、パイパー・エドシックを傘下にもつEPIグループだ。リードしたのは、18年に31歳の若さで同メゾンの醸造責任者に就任し、シャンパーニュの次世代を担うといわれるエミリアン・ブティア。
「メゾン参画前は、チリやアメリカのワイナリーで働き、国際的な視点を養いました。コロナ禍で海外出張に行けなくなり、将来に向けてチャレンジすることにしました。初めは懐疑的だった同僚たちもマインドセットが変わり、今では、あらゆる決定や活動でサステナビリティを考慮しています」
昨年には老舗のボランジェも同認証を取得するなど、キープレイヤーたちも後に続いている。同メゾンのド・ベレネMDは「B-Corpは取得して終わりではなく、定期的にモニタリングがあり、常に改善し続ける必要があります。皆、誇りをもって取り組んでいます」と語る。
「シャンパーニュは今、黄金期に突入している」とは米国の著名なワイン専門家の言葉だが、それは、大小、新旧問わず、生産者たちが多様なスタイルのワインを提案しているからに違いない。世界一のスパークリング・ワイン産地としての地位に甘んじず変わり続けているこの地では、行くたびに新しい発見がある。そんな土地のワインだからこそ、シャンパーニュは人を惹きつけてやまないのだろう。
島 悠里◎Forbes JAPANオフィシャル・コラムニストとしてワイン・シャンパーニュの記事を執筆。米国ニューヨーク州弁護士。サンフランシスコと東京を拠点に、国内外のメディアで記事執筆、セミナー講師、審査員など幅広く活動。Wine&Spirit Education Trust(WSET)Level 4: Diploma、公認エデュケーター資格取得。アカデミーデュヴァン講師。