事業継承

2024.07.08 14:15

「地球の歩き方」の救世主、学研グループ 元バックパッカー社長の組織編集術

──スタート直後から「aruco」「旅の図鑑」「国内版」などのシリーズをハイペースで発行し、ヒットを連発。一方で「一本足打法」から脱却すべく食品事業などの展開を進め、業績もV字回復しました。

新井 おかげさまで、当社は9月決算ですが、今期は増収増益の見込みです。2022年7月には、「地球の歩き方」シリーズ全体でコロナ前の売り上げを回復しました。

地球の歩き方には、まだまだ潜在価値がある

──学研スタイルの事業承継のスタイルと、ブランドに敬意を持って移ってきた社員に安心して働ける環境を整えたことの成果ですね。

新井 実は学研のやり方は欧米ではよく見られます。私は海外戦略を担当していたので、欧米の出版界の動きも見てきましたが、アシェット、ペンギンといった巨大グループの傘下で、数多くの有名ブランドが守られています。あの有名な出版社もこのグループなのか、と驚くこともよくあります。

ブランドが企業グループ傘下で守られていくのは世界的な潮流であり、日本も今後は同様のスタイルになっていくのかもしれません。

ただ、『地球の歩き方』にはもっと幅広い価値があると私は考えています。たとえば人を旅に誘ったり、あるいはリアルに集ったり、異業種とのコラボで化学反応を生み出すといった、出版物やメディアの枠を越えた可能性を感じています。世界でも例のない出版ブランド発の事業展開を目指していきたいと考えています。

『地球の歩き方』の事業譲渡の舞台裏には、受け入れ企業側のブランドへのリスペクト、「守っていかなければ」という使命感が感じられました。事業譲渡という難しい課題も、お互いを尊重する姿勢が根底にあってこそ、次への道が開かれていくのでしょう。

地球の歩き方 代表取締役社長 新井 邦弘◎1965年生まれ、埼玉県出身。東京都立大在学中にバックパッカーとして中国、ヨーロッパ、中東諸国をめぐり、大学卒業後に学習研究社(現・学研ホールディングス)に入社。月刊「ムー」編集、「歴史群像」編集長を経て事業室長に。2015年に学研ホールディングスへ転籍し、グローバル戦略室長に就任。20年、学研グループへの事業譲渡によって設立された新会社『地球の歩き方』の代表取締役社長に就任。

(本記事は、事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」の前編後編を編集しています。)

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