キャリア・教育

2024.07.16 15:00

ビジョナル南壮一郎が語る「夢」を現実にする方法


「私は6歳のときに、父が勤務する会社の転勤に伴い海外に移住しました。若いときに世界を感じた経験が今の自分をつくってくれた。それに近い経験を会社の仲間たちにもプレゼントしたい」

今年4月には、破綻寸前だった長野県の八ヶ岳中央農業実践大学校の理事長に就任した。もともと南は、会社の仲間たちが自然と触れ合える場所を個人でつくろうと広大な土地を探していた。その過程で農業大学校の関係者から連絡があり、再建を頼まれた。一度は「教育にもっと熱のある方のほうがふさわしい」とすげなく断った。しかし、昨年末に「1カ月後に破綻する」とまた連絡があった。

「断るにしても話を聞いてからにしようと中身を聞いたら、大自然が広がるキャンパスにほれ込んでしまった。個人プロジェクトとして社内外の仲間たちと一緒に再建に取り組めば、その先に、今は想像もできない景色がみんなで見えるかもしれない。そう思って理事長就任を決めました」

事前の情報収集を欠かさない南がわずかな検討期間で再建の決断をするうえで「中身を検討しきれてない」と嘆いたそうだが、それでも「頭を整理するために300ページほどの簡単な事業計画の叩き台はつくった」というから、普段いかに情報収集にこだわっているのかがうかがえる。

積極的に恩返しを始めたのは、資産家としてノブレス・オブリージュを意識しているからだろうか。最後にそう問うと、やんわりと否定された。

「ひとりでは見えない景色を仲間と見たいだけです。30年後、海外で刺激を受けた社員の子どもたちが、世の中にどんなインパクトを与えているのかをみんなに共有したい。これこそ、我々が会社をつくってきた理由なんだと。こんなに心躍ることはないじゃないですか。社会的な義務や責任で生きているわけじゃない。恩返しは仲間と一緒に楽しむため。それが自分の生き方です」
南と親しい友人や仕事仲間は彼のことを「スイミー(Swimmy)」 と呼ぶ。6歳でカナダに移住した 際、現地校でのマイノリティ経験 を絵本の『スイミー』と重ねて両親とともにつけた名前。アメリカでは住民登録時に正式なミドルネームとして登録している。

南と親しい友人や仕事仲間は彼のことを「スイミー(Swimmy)」と呼ぶ。6歳でカナダに移住した際、現地校でのマイノリティ経験を絵本の『スイミー』と重ねて両親とともにつけた名前。アメリカでは住民登録時に正式なミドルネームとして登録している。


みなみ・そういちろう◎ビジョナル代表取締役社長。1976年、静岡県出身。1999年、米タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレー証券(現 モルガン・スタンレーMUFG証券)の投資銀行本部に入社。2004年、楽天イーグルスの創業メンバーとしてプロ野球の新球団設立に従事。09年、ダイレクトリクルーティングプラットフォームのビズリーチを創業。2020年2月に同社がビジョナルとしてグループ経営体制に移行後、現職に就任。

ビジョナル◎HR Tech事業のビズリーチ、HRMOS、ビズリーチ・キャンパスを中核にグループを展開。「新しい可能性を、次々と。」をミッションとして、M&Aマッチング、物流DX、ITシステム脆弱性管理、セキュリティリスク評価などの課題解決を目指すサービスを打ち出している。資本金は63億5,600万円、グループ従業員総数は2,149人(2023年7月時点)。21年4月に東証マザーズ上場、23年12月にプライム市場に移行。時価総額は3,055億円(24年5月8日終値)。

文=村上 敬 写真=アーウィン・ウォン ヘアメイク=内藤 歩

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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