カルチャー

2024.07.25 08:15

「茶の湯は日常の儀式」 リモート弟子にOpenAI社員も、無所属茶人 天江大陸の実験

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コロナ禍で“日常の儀式”に光

コロナ禍では無数の茶会が中止になり、日々の稽古も感染対策により従来の手法が変更された。そんな折、天江さんはオンライン稽古に注力した。日本はもちろん、アメリカ、カナダ、フランスをはじめ、各国の生徒が毎週のようにオンラインで稽古を受け、海外の生徒においては今も継続中だ。またコロナ収束後には、モントリオールやサンフランシスコに赴き、対面でのワークショップを行った。
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そうした海外の生徒の特徴は、若いビジネスマンが多いこと。人工知能開発の最前線をいくOpenAIの社員をはじめ、スタートアップ企業の代表やエンジニアなどの時間的にも精神的にもかなり仕事に打ち込んでいる人が多いという。オンラインをベースにした彼らの仕事量が、コロナ禍で加速したのは明らか。

「コロナ禍で健康意識が高まりましたし、特にストレスの多いビジネスマンではなにかしらの瞑想をやっている方も増えました。そうしたなか、精神的にも身体的にも健康に働きかける最先端のツールとして、お茶への意識が急速に高まっているのです」
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ストレス解消やリラックス作用はもちろん、それ以上に彼らが求めているものがあるという。

「茶の湯では、掃除をする、茶碗を清める、料理する、歩く、お茶を飲むといった動作に良いとされる作法があるように、日常的な行為が儀式化されています。それら儀式に沿って身体を動かすことで、人は無心になり没入感を得流ことができる。欧米の先進国では、今では若い世代は教会などの宗教施設に行かないそうです。新たな精神的な拠り所として、そうした日常の儀式、彼らの言葉で言うとRitual(=儀式)、が求められているように感じます」


きっかけは日本の伝統建築

意外にも、茶道とは無縁の家庭で育ったという天江さん。ましてや幼少期から学生時代まで、両親の仕事の都合で外国暮らしが長かった彼にとって、日本文化は遠かった。高校3年に訪れた京都の街並みに惹かれ、建築を学ぶため京都の大学へ進学した。

「初めて伝統的な町家を見学した時、地味でつまらない建築に感じました。ですが目を凝らすと、欄間の彫りや建具の錺金具といった細かな意匠に気付き、心が震えました。ほとんど人目に触れない所にこれほど手をかけるという日本の美意識は、他のどの国でも触れたことがないものでした」



そうした伝統建築への興味を経て天江さんがたどり着いたのが、世界的にも最小建築と言われる茶室だった。その延長で、デンマーク出身の茶道家・ビスゴー宗園氏に師事するように。師のもとで裏千家茶道を学んだのち、独立した。


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文=池尾優

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