バイオ

2024.01.09

「脳がないのに学習」する動物の神秘、解明へ

研究者たちは、棘皮動物の一種であるクモヒトデが、特徴として古典的条件付けと呼ばれる学習形態を示すことを発見した。一点集中型である脳を持つ動物とは異なり、クモヒトデは中枢神経系を持たず、分散的な神経索を持っている。研究者によると、それぞれの神経索は独立して機能することができ、階層的な構造ではなく、むしろ委員会のようなシステムを形成しているという。

「処理を行う中心的存在がないのです」とジュリア・ノターは言う。彼女はデューク大学のソンケ・ジョンセン教授の研究室で、生物学博士号の一環としてこの新しい研究の先頭に立った人物である。

古典的条件付けは、ロシアの生理学者イワン・パブロフによって発見された学習プロセスであり、無条件刺激に中立刺激を関連付け、条件付けされた反応を生じさせるものである。長年にわたり、古典的条件付けは行動心理学を理解する上で重要な役割を果たし、刺激と反応の間の関連付けが経験を通じてどのように発達するのかを説明してきた。

Getty Images

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「神経索はそれぞれ独立して行動することが可能です」、ノターは加えて言う。「ボスの代わりに委員会があるようなものです」。

ヒトデを対象とした先行実験では、古典的条件づけの原理が適用可能であることが示された一方、棘皮動物に属するクモヒトデ、ウニ、ナマコについては、これまであまり研究が行われてこなかった。このギャップを埋めるため、研究者たちは16匹のクロクモヒトデを対象とした10カ月間の研究を行った。半数のクモヒトデは明るい照明下でのみエサが与えられたが、残り半数のクモヒトデは薄暗い照明とエサを関連付けるよう訓練された。

訓練されたクモヒトデは、光がない状態をエサと結びつけて学習反応を示した。初めは、照明が暗くなったとしても、クモヒトデたちは隠れたままだった。しかし時間の経過とともに、訓練されたグループは、エサが与えられる前であろうと照明が消えると隠れていたところから出てくるようになった。この行動は、脳を持たないクモヒトデたちが環境の合図を予測し、それに反応できることを示している。

この研究は、これらの生物がただの自動的な海の掃除屋であるという認識を覆し、学習された行動によって捕食者や餌の入手可能性を予測する潜在的な能力を浮き彫りにしている。

「学習できるということは、クモヒトデたちは海底を掃除する小さなルンバではないということです」、ノターは言う。「クモヒトデたちは環境を学習していて、捕食者を予想して避けたり、エサを予想して備えたりすることができるかもしれないのです」。

この研究は、脳を持たない動物たちが、他の種に見られる中枢性の脳とは異なる神経系を使って、どのように情報を学習し、想起するのか、そのメカニズムを明らかにすると同時に、さまざまな生命体における知性の本質について、私たちに、好奇心を掻き立てる疑問を投げかけるのである。




※本稿は英国のエンジニアたちが立ち上げたテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」からの翻訳転載である。

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