宇宙

2024.06.24 18:00

「宇宙最遠」の炭素、ビッグバン後3.5億年の銀河で検出 JWST観測

炭素は、どのようにして生成されたのだろうか。

デウジェニオによると、ビッグバンでは水素、ヘリウム、微量のリチウムしか生成されなかった。従って、今回の炭素を含む宇宙にあるすべての炭素は、恒星の中で生成されたはずだ。炭素は、大質量で寿命の短い恒星の内部で生成される場合と、低質量で寿命の長い恒星の内部で生成される場合とがあるという。


超新星による炭素の供給

デウジェニオによると、質量が太陽の約5000万倍しかない銀河GS-z12では、2番目のシナリオは除外できる。なぜなら、宇宙が非常に若かったので、低質量の恒星では炭素を大量に供給するための十分な時間がないからだ。これにより、大質量星で生成された炭素であることが示唆されるという。しかしながら、GS-z12で見られるC/O存在比は、既知の大質量星の結果とは一致しないと、デウジェニオは指摘する。このような理由で、今回検出された炭素を生成したのは、より特殊な種類の大質量星である種族III星(初代星)などではないかと考えられていると、デウジェニオは続けた。

種族IIIは、宇宙で最初に生まれた星で構成される理論上の種族だ。

一部のモデルによれば、初代星が超新星として爆発した場合、当初の予想よりも少ないエネルギーしか放出されなかった可能性があると、ケンブリッジ大は指摘している。この場合、炭素は恒星の外殻にあり、酸素に比べて重力による束縛がより弱かった。従って、炭素は脱出するのがより容易だったために銀河全体に拡散した一方、酸素はブラックホールへと大量に落下して崩壊した可能性があると、ケンブリッジ大は説明している。

今回の炭素は、種族III星が超新星になった結果なのだろうか。

デウジェニオによると、この炭素を生成した恒星がどのような種類かは断定できない。だが、恒星が進化するための期間が本当に短いという理由から、寿命を終えた大質量星が引き起こす超新星爆発が起源であるはずと考えられる。銀河系近傍の局所宇宙からビッグバン後10億年の宇宙までの範囲にわたる証拠は、超新星の結果として生じるC/O存在比が、GS-z12で観測される値よりもはるかに低いことを示していると、デウジェニオは続けた。
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翻訳=河原稔

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