NASAは、6月10日付の声明でこう述べている。「科学にとって宝の山となるこの大発見は、このような事象が深宇宙でどのように展開されるのかを研究する、これまでにない機会をもたらすものだ。さらに火星を初めて訪れた宇宙飛行士が、どれだけの量の放射線被曝を体験するのか、その程度についても知見を与えてくれた」
キュリオシティは時折、搭載されたカメラを使って、ゲールクレーターで起きる塵旋風(ダストデビル)や風の動きを観測している。2024年5月に、太陽からX12クラスのフレアが火星の方角に向けて放出された際に、キュリオシティはたまたまこの観測を行なっていた。
Xクラスとは、最も強力なタイプの太陽フレアを指す分類カテゴリーで、X12は並外れて強いフレアを意味する。NASAは説明資料で、「最大級を指すXクラスのフレアは、太陽系内では群を抜いて大規模な爆発であり、この上なく観測しがいのある現象だ」と述べている。
キュリオシティは今回、このフレアが火星におよぼした爪あとを捉えた。画像は、処理を経ているために粒度が粗くなっているが、筋のような模様や、雪を思わせる微小片のようなものが大量に記録されている。

キュリオシティの担当チームは、X(旧ツイッター)で以下のように説明した(ここでいう「私」とはキュリオシティのことだ)。「最近、私が定期的に行なっている粉塵観測が、大きな太陽現象が火星を襲った時期とたまたま一致する機会があった。そして、荷電粒子が私のカメラに当たり、画像にゆがみを生じさせた。これは、2012年に火星に降り立って以来、私が検知したなかでは最も大きな磁気嵐だった」
NASAが計算したところ、仮にキュリオシティの側に宇宙飛行士が立っていたとしたら、この人物は8100マイクログレイの放射線を浴びたことがわかった。これは、胸部レントゲン撮影を30回受けるのに相当する量だ。幸い、致死量ではない。
