宇宙

2024.06.22 18:00

地球ではオーロラ、火星で5月の特大「太陽嵐」はどう観測されたか

RADの主任調査員を務めるドン・ハスラーは、「崖の側や溶岩チューブ(溶岩が流れ出した後にできる空洞)は、このような事象から宇宙飛行士を守る、追加のシェルターの役割を果たすだろう」と述べている。「火星軌道でも深宇宙でも、線量率(単位時間当たりの線量)はかなり大きくなるはずだ」

太陽は今、活動のピークを迎えている。活動が活発化しているため、フレアやコロナ質量放出(CME)が頻発しているのだ。

米海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気予報センターによると、CMEとは、「太陽のコロナからプラズマおよび磁気エネルギーの巨大な塊が放出される現象」であり、放出される質量は数十トンにおよぶという。

この巨大放出が地球に達すると、鮮やかなオーロラが発生する。NASAによると、2024年5月に観測されたオーロラは、これまで記録に残るなかでも最も強烈なものの1つだったという。

フレアは、猛烈なスピードで宇宙空間を移動する。「光速で移動するため、今回のフレアから発したX線とガンマ線が真っ先に到達し、それから少し遅れて荷電粒子がやってきたが、(太陽から)火星に到達するまでには数十分しかかからなかった」とNASAは解説している。

今回の太陽嵐を火星で目撃した探査機は、キュリオシティだけではない。火星上空を周回するNASAの探査機MAVEN(Mars Atmosphere and Volatile EvolutioN)も、火星のオーロラを観測した。

地球には、太陽の爆発的な放射から地表を守るメカニズムがあるが、火星の場合は、地球ほどの保護の仕組みはない。そのため、地球のオーロラは南北両極周辺に集中して発生するのに対し、火星のオーロラは惑星全体を覆う。

MAVENの太陽光エネルギー粒子測定装置(SEP)が、この事象を追跡していた。さらにNASAは、この探査機の紫外線測定装置から得られたデータを用いて、オーロラの動画を作成した。


この動画の紫色は、5月14日からの1週間にわたり、火星の夜側で発生していたオーロラを表している。紫色が明るいほど、より多くのオーロラが発生した地域となる。

MAVENで、宇宙天気に関する観測を主導するクリスティーナ・リーは、「これは、MAVENがこれまでに観測したなかでも最大の太陽荷電粒子事象だった」と述べている。

太陽の活動はこれで終わりではない。活動が活発な時期が続くなかで、さらなるエネルギー放出が予想される。つまり、地球上ではオーロラという光のショーがさらに何度も繰り広げられるとともに、太陽と火星のエネルギーのやり取りについても、より多くのデータが得られるはずだ。キュリオシティとMAVENは、今後も観測を続けてくれるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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