宇宙

2024.06.24 18:00

「宇宙最遠」の炭素、ビッグバン後3.5億年の銀河で検出 JWST観測

宇宙で最初に生まれた初代星「種族III星」が超新星爆発を起こしている様子を描いた想像図(NAOJ)

これまでに知られている宇宙で最も遠方にある炭素を検出することに、天文学者チームが成功した。この炭素は、宇宙を誕生させた大爆発「ビッグバン」からわずか3億5000万年後の銀河に存在する。この発見には、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による現在進行中の深宇宙サーベイ観測計画「JWST Advanced Deep Extragalactic Survey(JADES)」の赤外線観測データが用いられた。JADES計画は、時間の始まりから間もなく形成された赤ちゃん銀河に存在する炭素の特定を目的としている。

今回の研究結果を受けて、宇宙論学者や理論天文学者は、宇宙の化学元素の供給に関する従来の知識の見直しを余儀なくされる可能性が高い。

天文学誌Astronomy & Astrophysicsに掲載予定の今回の研究をまとめた論文の中で、英ケンブリッジ大学の天文学者らが率いる国際チームは、この宇宙初期の銀河「GS-z12」の観測について詳しく説明している。GS-z12は、赤方偏移が12より大きい「宇宙の夜明け」(初代天体の誕生)に近い時代に存在している。

論文の筆頭執筆者で、ケンブリッジ大の天体物理学者のフランチェスコ・デウジェニオは、取材に応じた電子メールで、今回の研究により、最も初期の炭素の検出が確認されただけでなく、ビッグバンで生成される原初の元素(水素、ヘリウム、微量のリチウム)以外の化学元素の初検出が確認されたことになると指摘した。

また、宇宙史のこれほど初期に炭素が見つかることは、宇宙のどこかで、生命がこれまで予想されていたよりもはるかに早く出現していた可能性があることを意味しているかもしれない。

デウジェニオによると、今回の発見は従来の化学進化モデルにも疑問を投げかけている。炭素対酸素(C/O)存在比のこれほど高い値は、宇宙史のかなり後になって初めて確認されるものと予想されていたという。従って、今回の発見は、初期宇宙に予想外の新たな化学元素の供給経路が存在することを示していると、デウジェニオは説明している。

遠方の銀河は非常に暗いため、研究チームは近赤外分光法を用いて約65時間にわたり観測を行うことでようやく炭素を検出できた。

天文学者は、可視光やその他の電磁波の物質による吸収と放出を調べる目的で分光法を利用する。それぞれの元素は、独自の化学的特徴を示す痕跡が観測対象の天体のスペクトルに現れる。今回の場合、これによって宇宙初期の炭素の驚くべき同定が可能になったのだ。
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翻訳=河原稔

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