WOMEN

2024.07.10 15:15

医師にはシブられても。40代後半で挑んだ卵子凍結を克明ルポ

診療を受けたクリニックで。 個室待合室のリクライニング機能付き椅子(左), Getty Images

「全部で何個取りたいんですか?」

40代後半の筆者が、初めて卵子凍結をやってみようと思いつき、年齢制限を設けていない産婦人科で初診を受け、「それでも(採卵しようと思っても年齢を考えると卵子は1回の採卵で1個とかしか取れないのが現実でも)、やりたいと思ったら、生理が来た時に予約をとって、生理の2日目か3日目に診察に来てください」と言われた数日後。いつもより早く生理が来てしまった。
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実際、本当に卵子凍結を行いたいかどうかについてしばらく考えて決めようと思っていたのだが、生理が来たその日にクリニックに次の予約を入れないといけないので、確固たる決断、というものはないまま、流されるようにその場でオンラインで予約を行い、次の日、生理2日目に再診に行った。

今度は女医さんで、AMHなど、初診で行った血液検査の結果などについて説明を受けた後、おもむろに聞かれたのは、「全部で(卵子を)何個取りたいんですか?」という質問だった。私は答えを、持っていなかった。医師曰く、(卵子凍結を)万能薬のように思っている人もいるかもしれないけれど、そんなことはない。凍結しても、その凍結した卵子を戻ってきて使う例というのは実際問題少ないので、凍結されたままになって破棄されることの方が多い、のだという。また、妊娠に成功する目的のためには通常数十個の卵子を凍結する必要があり、30代だと1回の採卵で10個以上取れることもあるけれど、筆者の40代後半という年齢を鑑みるに、取れても1回に1個くらい、だという。

「じゃあそれを、5回やるのか、10回やるのか、1回でやめるのか──ということですね」と筆者。

本当に採卵までやるのか、やったとしたら何回やりたいのか、何個凍結したいのか、それに対する答えは出ないまま、2回目の診察時に朝晩に飲む薬(クロミッド、ホルモンレベルを上げるためのもの)を処方されて、この日の請求額は約1万8千円。(会社からの補助が出るとはいえ)どんどんカードへの課金が膨らむ。AMHは、理事長が言っていた通り、0.39という低い数字だった。
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ここまで、血液検査と内診のみで、特に痛みはない。診察は別に気持ちが良いものではないけれど、お医者さんにかかる時というのは一般的にそんなものだと思う。ただ、初回から2回目の診察が終わった後の数日間は、肉体的にというよりは、感情的に、ジェットコースターのように上下が激しかった。

ある日はやっておこう、と思ったり、ある日は少しでも痛いなら、そしてほぼ可能性がないならやらなくていいのでは、と思ったり。親しい友達にも、そもそもなぜこれやりたいんだっけ? と聞かれ、治療を開始後のこの時点でもはっきりとした答えがない自分に気付かされた。それを機にもちろん、自分がなぜやりたいのかを考えてみたのだが、答えは、「今しかできないから」というのと「お金の心配は(会社の補助により)しなくていいから」というさもしいものだった。

卵子が保管されるのは「50歳の誕生日まで」?

次の診察までに必要な書類を準備しようと、「同意書」を取り出した。署名をしようと項目を見ると、50歳の誕生日までしか卵子は保管されない、とある。じゃあもし痛い思いをして今採卵したとしても、下手をすれば数年しかおいておけないということ……!? ショックだった。この時点で私は、もう卵子凍結はやめておこう、と思った。他の医院の情報を確認しても、おしなべて卵子の保管は50歳まで、とある。ただ私は、今かかっているクリニックに確認をした上で次の来院をしたいと思い、行き始めた産婦人科に問い合わせてみた。

すると、「凍結の期間については、毎年検診があるので、その時に都度ご相談ください」という返事をもらった。それはつまり、置いておくことは不可能ではないということで……。この返事をもらうまで、「そして、結局、私は卵子凍結を行わなかった」という記事の結末を用意すらしていたのだが、置いておけるのなら、と気持ちは再度揺り戻され、ジェットコースターのような感情の起伏を短期間に再度味わった。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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