福利としての卵子凍結補助、メタ、アップルも
日本企業でも不妊治療や卵子凍結に対して手当を出している企業は出てきており、一例としてメルカリは二百万円を上限に設けているが、比較的最近の傾向だ。一方アメリカでは、不妊治療や卵子凍結への企業による支援は、10年前の2014年、アメリカ企業のメタ、フェイスブックを運営している企業やアップルが開始したことが話題になった。優秀な女性が、仕事に脂の乗った時期に出産について思い悩むことなく仕事に打ち込んでもらえるように、という思いのもと、女性がキャリアとライフプランを考える上で選択肢を広げるための福利厚生の一部として取り入れられた。その後Googleやネットフリックスなども導入。これら西海岸ベースのテック企業はオフィスでランチが無料など、社員に対する福利厚生が充実していることで知られる。
一方、IT企業ではコロナ後までは熾烈な人材獲得競争が続いており、より充実した福利厚生は、優秀な人材の獲得に一役買ってきたという。
また、伝統的にIT企業は女性の従業員数が少なく、社員の多様化を進める上で、女性にフォーカスした福利厚生や制度を強化することが重要だったとも言えるだろう。
現在筆者が勤めている会社も外資系企業であり、不妊治療の費用を一定の上限まで会社が拠出してくれる制度がある(実は過去の勤め先の外資系企業にも、不妊治療の手当を出しているところがあり、その場合は上限八百万円だった。その際にも少し治療を始めようかという気持ちもあったが、仕事が非常に忙しく、忙しなさに紛れているただ中に次の仕事が決まり、その制度を使うことがなかった、という経緯がある)。
公的な助成や保険診療は年齢制限が設けられているが、こうした外資系企業による不妊治療の補助や手当は、筆者が知る限り年齢制限を設けているとは聞いたことがない。また、従業員本人だけでなく、従業員の配偶者もしくはパートナーが不妊治療を受けた場合にも(配偶者やパートナーの年齢に関わらず)手当は適用される。それもあって筆者自身は、卵子凍結を行うに適した年齢を実際に実施に踏み切るまで考えたことはなく、これでもかというくらい年齢による制限や壁を感じさせられる会話や体験は、実際に治療を始めて初めてしたり、聞いたりしたのであった。