1. 日本のものづくりの層の厚さを示していたのが、今年4月に開かれた経済産業大臣と特許庁長官による「知財功労賞」の表彰式だった。高橋是清の特許条例制定にちなんで4月18日を「発明の日」として、政府は27の企業と学者を表彰。花王やLIXILといった大企業ばかりでなく、中小企業も含まれ、本誌「スモール・ジャイアンツ」受賞企業4社(コーワ、大和合金、シェルター、環境大善)が表彰された。カッティングエッジであり続けたいという人は、企業規模の大小に関係なく、日本に多い。
2. 「経済複雑性指標」(ECI)をご存知だろうか。「技術のすり合わせによって複雑なモノを生み出す能力」の高さを示している。このECIで日本は実に20年連続世界一だ。複雑さは高コストとなり、利益を生みにくいが、その解決策を本誌10周年記念号に掲載した。
3. グラフ「主要国の生産年齢人口の推移」を見てほしい。日本を先頭にすでに先進国と新興国の多くで働き手が減少している。インドですら2030年には生産年齢人口がピークに達する。つまり、モノをつくる人は減るのに、65歳以上の消費者は世界的に増えていく。では、消費されるものは誰がつくるのか。
ここで注目されるのが、省人化に貢献する産業用ロボットである。日本はファナック、安川電機、三菱電機、キーエンスなどが有名で、世界でも類を見ないティーチング(人による教示)を不要とする知能ロボットも進んでいる。スタートアップのMujinがそれだ。同社は知能ロボットによって他社のロボットも一括制御できるプラットフォームも提供する。ここで課題になるのが、カスタマイズだ。大量生産・大量消費から多品種少量生産の時代に移っている。それらを日本の産業用口ボットが可能にするか、だ。
1~3までの要素を揃えた企業が、この6月、CNNなど米メディアで紹介された。ニュージャージー州を拠点に世界最大級の植物工場「メガファーム」を稼働させたOishii Farm Corporation(以下、オイシイ)だ。CEOは日本人の古賀大貴。まだ30代だが、すでに高級いちごの量産化を可能にし、アメリカで成功している。「植物工場なんて珍しくない」と思う人もいるだろう。実は、アメリカで続々と誕生した植物工場スタートアップは大半が倒産するなど経営に行き詰まっている。オイシイと何が違うのか。ここに日本が勝てる秘密がある。
「僕らはいちごで儲けて成功したいなんて思っていないんですよ」と、古賀は言う。古賀が目指しているのは「食と農業で、日本発の100兆円規模の世界産業を創出すること」。植物工場のグローバル・マニュファクチュアリングだという。