クリエイター新時代の切り札「小さな思いつきを小さくかたちに」

クリエイティブチーム「entaku」で企画した「いい人すぎるよ展」

「いい人すぎるよ展」「友達がやってるカフェ/バー」など2023年のトレンドの一角をつくった明円卓。クリエイター戦国時代の今、次の時代を担う人材の条件とは。NEXT100の選出にも携わった明円が解説する。


今クリエイティブ界隈にはふたつの流れがあると思っています。ひとつは、企業に属さずに何かをつくったり発信したりするクリエイターが増えたこと。僕もそのひとりですが、大企業のクリエイティブ職に就いていた人がどんどん独立しています。もうひとつは、自分で旗を立ててチームをつくる人が増えていること。広告に限らず、YouTubeやファッション、映像制作などさまざまな領域のクリエイターが小規模のクリエイティブチームをつくっています。ひとつめの流れと逆行するようですが、小規模のチームであることがポイントです。
 
もはやクリエイティブ職は裏方ではなく、クリエイター本人がメディアになる時代。独立して旗を立てた人がチームをつくって集まって、大きなチャレンジをするそんな流れがあります。

例えばクリエイティブアーティストのあさぎーにょさん。2019年にYouTubeに投稿した映像作品が659万回再生(4月1日時点)のヒットとなり、その後もファッション、メイク、Vlogなどのコンテンツでファンを増やし、現在は116万人以上(同)の登録者数を誇っています。彼女はチームを結成し、ファッションブランド「POPPY」を立ち上げました。18年に創業した株式会社POPPYでは、特にアパレル事業で大成功を収めていて、全国各地の百貨店から引っ張りだこ。さらには事業をアパレルだけに限定せず「世界をもっとポップにする」というビジョンのもと、新しいことにチャレンジし彼女の仕事の幅を広げています。
 
こうしたクリエイティブチームが増えるに伴って、クリエイターにも経営やリーダーシップの手腕が問われるようになっています。これはクリエイティブとは別の能力なので、新しい課題が生まれています。
 
僕は、次世代クリエイターたちに共通する要素に「クリエイティブ&プロデュース」があると思っています。つまり、全員がクリエイターでありながらプロデューサーでもあるということです。
 
彼ら・彼女らは、デザインや映像制作だけでなく、プロジェクトを立てるところから担います。「企画だけ」「ものづくりだけ」ではなく、ステークホルダーを巻き込みながら「世の中にどう届けて、社会的なインパクトをどうつくるのか」をプロデュースする能力が求められています。
 
その裏には、生成AIの影響もあると思います。クリエイターの技術は、テクノロジーに駆逐されてしまう可能性がありますよね。デザインやアートはまだAIが追いつけない領域ですが、バナーなど単純なクリエイティブ制作はすでにAIに任せられるようになってきている。そうしたときにプロデュース力があるクリエイターは強い。
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文=田中友梨

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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