COLUMN
「アーリーステージ」と「ユニコーン」のインパクトをつなぐ架け橋になる
アーリーステージのスタートアップへのインパクト投資は5%未満であり、自然や生物多様性に焦点を合わせたベンチャー企業への投資はさらに少ない。また、シードやシリーズA段階の企業とユニコーンとの間には大きな隔たりがある。アップリンクはその架け橋になるために設立された。民間セクターは、イノベーション・エコシステムを構築するうえでとても重要だ。この数年、私たちはアーリーステージの企業と民間セクターとをつなげる活動を続けてきた。企業パートナーはもちろん、時には各国の政府関係機関や慈善団体などからも資金を調達している。これらの資金が、革新的なアーリーステージの起業家たちをサポートするエコシステム構築の触媒になる。
アーリーステージの起業家たちが直面している課題は3つある。投資環境、インパクト測定、そしてパートナーシップだ。
まず投資環境だが、起業家と投資家の間で期待値が異なる点が課題として挙げられる。起業家は5年から10年といった長期的な視野をもち、この時間軸のなかで自分たちのソリューションがスケールし収益性が生まれると考えているかもしれない。だが、彼らのスピード感覚は投資家の時間軸とは異なる可能性がある。この隔たりを埋めるには、起業家と投資家がお互いの期待値についてオープンに対話することが重要だ。
インパクトの測定についても同じだ。起業家が手がけるビジネスに対して、投資家が期待することは何かを明らかにしておくべきだ。また、投資家には財務的なリターンだけではなくネット・ゼロなど持続可能な世界へのリターンも重要だという点を共有する必要がある。極論を言えば、地球が存在しなければいくらもうけても意味がないのだから。
3つ目のパートナーシップだが、ここでも起業家、投資家、民間セクター、専門家らが互いの見解や認識をもち寄り、オープンに対話することが重要だ。このように、起業家が直面している3つの課題すべてに共通するのはコミュニケーションの大切さだ。アップリンクが異なる立場の人々を結びつけ、信頼を築くことを重視しているのはこのためだ。
必要なのは投資家のコミュニティだけでも、民間セクターや政策立案者だけでもない。彼らが足並みを揃えれば世界の課題により早く対処できる。世界の平均気温の上昇は(化石燃料の大規模な使用が始まる以前と比較して)1.5度にかなり近づいている。時間を無駄にしている場合ではない。
ジョン・ダットン◎世界経済フォーラム、UpLink部門長。国連責任投資原則のスモールファンド・イニシアチブ・コーディネーターなどを経て世界経済フォーラムへ。財団の責任者やヤング・グローバル・リーダーズ・フォーラム責任者を経て現職。