「ビジネスの使命と価値を高めてくれる潜在的なパートナーとのつながりを組織し仲介することこそ、アップリンクが最も得意とすることだろう」
気候変動や環境汚染など、世界が直面している課題を解決するには経済活動や社会のシステム変革が求められる。そのためには、さまざまなステークホルダーやパートナーに出会い、信頼関係を築くことが欠かせない。
水を1滴も使わずにプラスティック容器の油分を取り除くことができる技術を開発し、循環型経済の実現に取り組むエコ・パンプラス創設者兼CEOのフェリペ・カルドーゾは「サーキュラーエコノミーにはさまざまなステークホルダーとパートナーシップを組み、すべてのバリューチェーンを巻き込む必要がある」と前置きしたうえで、アップリンクの魅力は幅広いネットワークを構築できる点にあるという。「今回のダボスでも石油化学関連企業や世界有数の石油会社のリーダーに出会い、我々の技術を知ってもらい、どのように協力しながらスケールアップできるかを話し合うことができた」
信頼を再構築し、希望に光を与える
アップリンクの活動は24年1月で満4年を迎えた。この4年間で、トップ・イノベーターたちは5600万ヘクタール以上の自然生息地を保護し、1700万リットル以上の水を保全し、2万3910トンの海洋廃棄物を収集し、2920トンの資源のリサイクルを促進したという。スタートアップの成長にはどのように貢献しているのか。24年2月に出た「アップリンク・インパクト・レポート」によると、アップリンクのイベントに参加したトップ・イノベーターのうち3割が、アップリンクや世界経済フォーラムのイベント、デジタルチャネルを通じて新たな投資を受けたと回答。さらに18%のトップ・イノベーターが追加資金を獲得できたという。
持続可能な未来につながるイノベーションを世界中から発掘し、マルチステークホルダーとの関係性をフル活用しながらインパクトの創出を後押しする。これは世界経済フォーラムが築いてきた人脈やブランド力があるから成り立つ仕組みであり、一朝一夕につくれるものではないだろう。だが、世界共通の課題に挑む革新的なリーダーやソリューションが求められる今、世界規模のイノベーション・エコシステム構築に取り組むアップリンクに学ぶことは多い。
どんなに革新的なソリューションがあっても、たったひとりで世界を変えることはできない。信頼できる仲間の存在を推進力にしながら希望の光を灯し続け、希望を現実に変えていく。それこそがイノベーション・エコシステムの神髄だろう。マンドゥリス・エナジーのニーコは言う。
「今年の年次総会のテーマ『信頼の再構築へ』という言葉に、私は『希望に力を』という2つのワードを付け加えたい。私たち人類が今日、産業とテクノロジーの最前線にいるのは、絶え間ないイノベーションによって私たちをここまで導いてくれた先祖や先祖代々の家長、そして両親のおかげだ。克服できないほど困難な問題はない。私たちが求める答えは世界中のどこからでも、誰からでも得ることができるのだ」