北米

2024.06.09 09:00

チップ文化をもてあます米国人35% 「隠れた税金」との指摘も

D-VISIONS / Shutterstock.com

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米国人の35%がチップを支払う文化は暴走しつつあると考えていることが、5日に発表された米金融情報会社バンクレートの最新調査で明らかになった。前年比5ポイントの増加だ。また、チップに対して何らかの否定的な見解を持つ人は、前年調査の66%からやや減少したものの、59%に上った。

チップに否定的な意見の中には、企業が従業員の給与額を引き上げ、チップに頼る必要がないようにすべきだという主張もあれば、支払い画面にチップの金額があらかじめ表示されていることにイライラするとの訴えや、チップとしていくら渡せばいいのか困惑する声もあった。

年配世代のほうが、若い世代よりもチップ文化に否定的だった。チップに少なくとも1つ以上の批判的見解をもつ人はベビーブーマー世代(1946~64年生まれ)で72%、X世代(65~70年代生まれ)で62%に上ったのに対し、ミレニアル世代(81〜90年代半ば生まれ)では51%、Z世代(96~2010年代初頭生まれ)では45%だった。

散髪、レストランでの食事、タクシー乗車などの際に必ずチップを支払う人の割合は、いずれも前年より微増したものの、2021年と比較するとそれぞれ7ポイント以上減少している。

調査によると、チップを支払う人の大半にとって最大の決め手がサービスの質にあることに変わりはない。64%がチップの額は受けたサービスに応じて決めると答え、サービスの質に関係なくいつも同額を支払うと答えた人はたった10%だった。

Z世代とミレニアル世代はチップにさほど否定的ではないものの、状況によってチップを支払わない傾向は年配世代よりも強い。X世代の78%、ベビーブーマー世代の86%がサービスを受けたら必ずチップを支払うと答えたのに対し、ミレニアル世代では56%、Z世代ではわずか35%にとどまっている。

支払い画面上でチップの金額を提示されて悩んだと答えた人は34%に上った。こうした場合、実際に支払われるチップの額が少なくなることもわかった。事前に金額が記入された支払い画面が表示されたときに、相場より多く支払うと答えた人は14%にすぎず、25%の人が少なく支払うか、まったく支払わないと答えた。

米国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを境に、以前よりもチップの支払いを期待される場面が増えたという不満の声が聞かれるようになった。ピュー・リサーチ・センターが2023年に行った調査では、米国人の70%以上が5年前よりも多くの場所でチップを要求されると答えており、この現象は「チップフレーション」(チップのインフレーション)と呼ばれている。

米公共ラジオ(NPR)は、パンデミックのさなかにも働きに出る人々に感謝の意を示そうとの人々の思いが、チップの増額や支払う場面の増加につながったと報じている。また、バンクレートの調査で人々に嫌がられていることが判明した事前にチップ額が記入された支払い画面など、テクノロジーの発展もチップを要求しやすくしている。

バンクレートのシニア業界アナリストであるテッド・ロスマンは、調査結果の発表にあたって「チップは隠れた税金と化している」と指摘。企業の間でサービス価格の値上げを躊躇する傾向が強まる中で、チップは「雇用主が負担することなく」労働者が確実に稼げる方法として利用されていると説明した。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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