北米

2023.12.01

コロナ禍で増えた貯蓄を急速に散財、さらに借金 米国特有の金銭感覚

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米国民の貯蓄額は、コロナ禍の時期に上昇したものの、その後に驚くような逆戻りを見せた。2022年には、前年の2021年と比較してマイナス63.5%と激減し、2013年の水準まで下がった。

米商務省経済分析局(BEA)とセントルイス連邦準備銀行(FRED)が11月20日に発表した統計値によると、米国の家計の貯蓄総額は、2022年に8000億ドル(約120兆円)をわずかに超える額にまで急減している。これは、政府からのコロナ対策給付金の一部が打ち切られた上に、物価上昇による生活費の逼迫が、国民に大きな打撃を与えているという事情によるものだ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まった当初、米国の家計の貯蓄額はかつてなかった水準にまで急上昇し、2019年から2020年の間でほぼ2倍に膨らんだ。レストランやエンターテインメント施設が営業停止に追い込まれ、旅行が制限され、米国にいるあらゆる人が自宅待機を指示されるなかで、人々は故意ではなく支出を減らし、貯蓄を増やすことになった。だが残念ながら、これは長く続かなかった。

米国における家計の貯蓄および負債総額の前年比変動率(%)の推移

2019年 貯蓄:+21.5% 負債:+2.9%
2020年 貯蓄:+92.1% 負債:+3.3%
2021年 貯蓄:-23.5% 負債:+6.4%
2022年 貯蓄:-63.5% 負債:+6.8%

米国の家計の貯蓄額は、他国と比べて低いと考えられているが、2013年から2019年にかけて着実に増加していた。だが、この期間に積み上げられた金額と、コロナ禍の時期の急増分は、直近のわずか2年間で雲散した。

一方、米国の家計の負債額は2021年以降、加速度的に増加している。前年比の伸び幅は、それより前の時期は3%前後だったものが、6%を上回るまでになっている。米国の家計部門の負債(民間非営利団体の負債、債務証券、ローン、債権が含まれる)の総額は、2022年に19兆ドル(約2850兆円)を超え、貯蓄額をはるかに上回った。

2023年は、この傾向がさらに加速した可能性がある。ほぼこの1年を通じて、インフレが高止まりしている上に、コロナ禍に関連する経済テコ入れ措置が次々と打ち切られているからだ。

その最も顕著な例が、学生ローン返済の一時停止措置だ。ニューヨーク・タイムズの報道によれば、学生ローンの借り手の多くは、返済猶予を好機と見て、家や自動車などを買うために別のローンを組んだという。これが、2021年以降に負債総額の上昇ペースが加速した理由のひとつとなっている。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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