北米

2023.12.01 09:30

コロナ禍で増えた貯蓄を急速に散財、さらに借金 米国特有の金銭感覚

日下部博一
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FRBは、貯蓄の減少を「米国特有の現象」と分析

ニューヨーク連銀は2023年10月、こうした状況を「米国特有の現象」と断じた。他の高所得国の場合、可処分所得に貯蓄が占める割合は2020年、2021年と上昇したが、その後2022年、2023年も安定して横ばいとなっている。これに対して米国では、再び減少に転じているのだ。

ユーロ圏の貯蓄率も、2022年以降、コロナ禍以前の水準に戻ったが、米国ではその水準さえも下回っている。これは、コロナ禍の時期の貯蓄規模を、米国が維持できなていないことを意味する。さらに、英国や日本、カナダなど、ユーロ圏以外の国々では、コロナ禍以前よりも大幅に高い貯蓄率が維持されているところもある。

米国消費者の旺盛な支出は、アフターコロナの時期に米国のGDP(国内総生産)がこれほど急激に回復した理由のひとつでもある。だがもちろん、米国民の経済的な安定や今後への備えという意味では、マイナスの影響がある。

経済の見通しが不透明な状況で、しかもインフレが実質的な可処分所得を減じている状況にもひるむことなく、多額の消費をする意欲があるという米国人の傾向が、改めて証明されたというわけだ。現在は、危機的なインフレにより、実質ベースではマネーの流通は世界的に緊縮傾向がかなり強くなっているにもかかわらず、米国人は他の先進国の住民と異なり、コロナ禍前から積極的だった支出のペースを緩めようとしていない。

米国の消費者は、コロナ禍の時期に蓄えた貯金について、現在の経済の状況を乗り切るために、まさに絶好のタイミングで積み上げられていたカネとしてとらえているようだ。米国人の金銭感覚が、他の国といかに異なっているかを、改めて示す格好になったと言えるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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