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2024.05.23 10:30

「大人用おしり拭き」で売上170億円、米新興Dudeの創業ストーリー

(C)dudewipes

現在39歳のショーン・ライリーは、2011年にDude Products(デュード・プロダクツ)と呼ばれるスタートアップを2人の幼なじみと共同で立ち上げた。シカゴに本社を置く同社は、Dude Wipes(デュード・ワイプス)と呼ばれるトイレに流せる「大人向けおしり拭き(ウェットティッシュ)」で既に、市場規模が110億ドル(約1兆7000億円)とされる米国トイレットペーパー市場の1%を獲得した。著名投資家のマーク・キューバンの支援を受けた同社は今、この市場の10%を奪おうとしている。

デュードの創業者兼CEOのライリーは、共同創業者のライアン・ミーガンとジェフ・クリムコウスキーらと共に、P&Gやキンバリー・クラークといったトイレットペーパー業界のリーダーの戦略を、綿密に研究した。業界の大手が、人懐っこいクマや天使のイラストを使うのに対し、デュード・ワイプスは卑猥な絵文字やダジャレを使っている。一般的なトイレットペーパーのパッケージは白だが、デュード社は、漆黒のパッケージの中にフレーバーつきのおしり拭きを入れて、48枚入りを4.99ドルで販売中している。

伝統的なマーケティングに背を向けた彼らは、口コミで事業を拡大し、2015年に起業コンテストの人気番組『シャーク・タンク』に出演し、ビリオネアのマーク・キューバンに対し「あなたのお尻は、乾いたトイレットペーパーを使うあなたのことを憎んでいる」と言い放ったことで有名になった。キューバンは、その直後にデュードの25%の株式と引き換えに30万ドル(約4600万円)を出資した。その資金は創業13年のデュードにとって唯一の外部からの調達となっている。

創業者たちは、きわめて保守的なスタイルでビジネスを成長させてきた。2016年までは、ライリーのみがフルタイムの従業員で、他の共同創業者たちは事業資金を得るために本業を続け、ライリー自身もウーバーの運転手やウェターとして働いた。製造のすべてを、競合他社が使用するアーカンソー州の工場に委託しており、同社の従業員数はわずか21名だ。

デュードは、ボディーソープやデオドラント製品などで多角化を目指した時期もあったが、今では、おしり拭きのみに専念して事業拡大を目指している。

売上高は年間170億円

そして今、3人の努力が実を結びつつある。シャーク・タンクが送り出したスタートアップの中で、最も成功した企業のひとつであるデュードは、2022年に7000万ドル(約109億円)だった収益を、昨年は1億1000万ドル(約171億円)に拡大した。2016年から黒字を続けている同社の売上高は、今や年間110億ドル(約1兆7000億円)規模のトイレットペーパー市場の1%を占めている。

創業者たちは、デュードが今後5年以内に5億ドル(約779億円)の売上高を達成し、最終的には10億ドル(約1558億円)のブランドになると見込んでいる。同社のプロダクトは現在、ウォルマートやターゲット、クローガーを含む全米2万以上の店舗で販売されている。

「最初はゼロだった売上を1億ドルにするまでの過程は、本当に正気の沙汰ではなかったと思いますが、1億ドルを5億ドルにするのは、それほど難しいこととは思いません」と、共同創業者のクリムコフスキーは述べている。
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編集=上田裕資

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