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2024.05.24 15:30

利益の源泉はいつも「革新的な手法」ブラックストーンが語る世界制覇の戦略

Forbesのイベントに出席するブラックストーンのジョナサン・グレイCOO(Taylor Hill / Getty Images)

新たな成長をけん引するふたつの事業

ブラックストーンの従来からの機関投資家向けバイアウトファンド事業は、6410億ドルの運用資産を擁し、現在も強力なビジネスであり続けている。だが、新たな成長の大部分をけん引しているのは別のふたつの事業部門だ。
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過去2年間の急激な金利上昇と銀行の融資控えが相まって、プライベート・クレジットやノンバンクといった直接融資が活況になっている。ブラックストーンは、昨年9月にはクレジット事業と保険事業を統合し、長く公募債への投資が習慣になってきた保険会社の顧客の取り込みに奔走。統合後、この部門の運用資産残高は3190億ドルとなった。

そこでブラックストーンは現在、投資適格債でも同種の債券より利回りが150ベーシスポイント高いものを保険会社に提供している。

「メガトレンドとして、クレジットは純粋に流動的な資産クラスからプライベート市場の大きな少数派である資産クラスに移っています」(グレイ)
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全米保険監督官協会によると、保険会社は22年末時点で米国だけでも5兆ドル以上の債券を保有している。グレイは、“大きな少数派”とは、具体的には20%ほどだと考えている。

ブラックストーンが見込むもうひとつの成長要因は、世界中の資産管理会社が抱える裕福な投資家顧客だ。個人投資家の資産は、すでにブラックストーンの運用資産の4分の1近くに当たる2400億ドルを占めており、年平均30%以上伸びている。

これこそが、グレイのもうひとつのイノベーションであるパーペチュアル・ファンドが重要な役割を担う分野だ。グレイは15年ごろ、ビルや機関投資家向けの商業不動産に投資した個人にどのような選択肢があるのかを綿密に調べた。すると、高リスクのユニークな物件以外で投資できるのは、変動性の高い上場不動産投資信託(REIT)か、比較的流動性が低く、透明性に欠け、購入時手数料が最大12%と高い非上場のプライベートREITだった。

「ブラックストーンがもつ最高水準の不動産投資スキルを個人投資家にも提供し、機関投資家と同じ水準の手数料を取ったらどうか、と考えたのです」(グレイ)

そして17年、グレイはブラックストーン・リアルエステート・インカム・トラスト(BREIT)を立ち上げた。これはミューチュアルファンド(オープンエンド型の投資信託)に似た証券会社向けの商品で、2500ドルから投資でき、投資顧問報酬が1.25%、成功報酬が12.5%、ハードルレート(最低利回り)が5%に設定されていた。従来のPEファンドとは異なり、資金拠出期間(ドローダウン)も償還期間もなく、投資家の資金はすぐさま運用が開始される。ただし、償還額はひと月に純資産の2%まで、あるいは四半期に5%までに制限される。

グレイの発明した商品は、メリル・リンチやモルガン・スタンレー、UBSなどで飛ぶように売れた。こうした証券会社は多くの場合、販売手数料を上乗せしていた。21年になると、学生向けアパートやデータセンター、倉庫などを保有するBREITの資産額は700億ドルまで膨らんだ。

BREITの成功は、ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド(BCRED)を生み出した。21年に運用を開始し、現在の資産額は290億ドルになる。ブラックストーンの競合であるアポロとKKRも、同様のファンドを提供している。こうした運用期限のないパーペチュアル商品には1兆2000億ドル以上が流れ込んでいると推定される。

さらに同社は、ブラックストーン・プライベート・エクイティ・ストラテジーズ・ファンド(BXPE)を立ち上げた。これは、元来のバイアウトファンドを個人投資家に優しいファンドにパッケージ化したもので、今年1月初旬の時点で13億ドルを調達している。
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文=セルゲイ・クレブニコフ、マット・シフリン 写真=グレリン・ブラスク 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

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