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2024.05.24 15:30

利益の源泉はいつも「革新的な手法」ブラックストーンが語る世界制覇の戦略

「しょっちゅう山のように質問をしてきましたよ」

2005年、シュワルツマンは34歳になったグレイを、成長中のブラックストーンの不動産部門のトップに任命。シュワルツマンによると、グレイは同社史上最大の利益を生み出した取引に貢献したふたつの鋭い戦略的なアイデアで頭角を現した。彼はまず、早くから商業不動産担保証券(CMBS)を採用。これによりブラックストーンは、より大型の取引をより低コストで扱えるようになった。また、同社が上場不動産企業(所有者の多くは長年かけて物件を購入している)を個々の保有資産の合計より低い価格で買収できることにも気づいた。

これらふたつの取引は、どちらも不動産市場がピークを迎えた07年に発生した。1つ目は、伝説の不動産投資家サム・ゼル率いるエクイティ・オフィス・プロパティーズの390億ドルでの買収だ。市場のバブル化を懸念したシュワルツマンは、即座にグレイのチームに300億ドル近い資産の売却を指示。それにより、この取引からリスクの大部分が取り除かれ、一方で同社はニューヨーク、ボストン、カリフォルニアの最上級の不動産は保有し続けた。そしてパートナーたちの投資の価値は、3倍になった。

2023年にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されたMETガラに出席するブラックストーンのスティーブン・シュワルツマンCEO夫妻(Taylor Hill / Getty Images)

2023年にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されたMETガラに出席するブラックストーンのスティーブン・シュワルツマンCEO夫妻(Taylor Hill / Getty Images)

もうひとつの取引は、ニューヨークのウォルドーフ・アストリアやヒルトン・ハワイアン・ビレッジを保有するヒルトン・ワールドワイドの260億ドルでの買収だ。取引が成立したのは07年10月で、ちょうど世界の金融制度が崩壊の瀬戸際にあった時期。成果が出るまでに6年の歳月がかかったが、グレイはそこから強力なブランド力をもつ良質な資産は適切な経営と財務支援を行えば、割高で買収しても優れたリターンを達成できることを学んだ。

景気後退が深刻だった時期、ブラックストーンはヒルトンへの投資を71%の評価減として計上したが、グレイは粘り、同社の債務を大幅に割安な価格で買い戻し、さらに8億ドルを注入。13年にヒルトンが株式公開した後、ブラックストーンは過去最大の勝利を収め、約140億ドルの利益を手にしていた。

ブラックストーンの利益の大部分がグレイの築き上げた1150億ドルの不動産事業によってもたらされたことから、シュワルツマンは18年にグレイを同社の社長兼最高執行責任者(COO)に任命した。
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文=セルゲイ・クレブニコフ、マット・シフリン 写真=グレリン・ブラスク 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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