経営・戦略

2024.05.15 11:00

【バフェットが株主総会で語ったこと1】消費者心理とアップル

今年の株主総会で、バフェットは自身にとって最大の投資先のいくつかについてコメントをし、そうしたビジネスへの投資判断の指針として行動心理学をいかに活用しているかを明らかにした。その多くは彼の長年の経験に基づくもので、直観的なものだ。

バークシャーでは、投資家の恐怖と貪欲のレベルを総合的に判断することが、常に投資の指針となってきた。1964年、アメリカン・エキスプレスが融資していた会社の1つがサラダ油の不正取引で摘発され、同社への不信が広まった際、バフェットはアメリカン・エキスプレスの株を買い漁った。恐怖のあまりアメックスの株価は50%以上も下落したが、その後回復し、恐怖が過ぎ去ると、同社の株価は急騰した。バークシャーは現在もアメリカン・エキスプレス株を保有しており、その価値は360億ドル(約5兆6000億円)以上にのぼる。2008年の金融危機のさなかにバフェットがゴールドマン・サックスに50億ドル(約7788億円)を投資したのも、投資家の極端な行動を利用して利益を得た例である。

以下は、2024年のバークシャー・ハサウェイ株主総会のハイライトを編集したものだ。本シリーズは3部構成でお届けする。第一部となる本稿では、投資とビジネスにおいて消費者心理を理解することの重要性や、バークシャーがアップル株を一部売却した理由について触れている。

消費者心理の重要性

──バフェットとマンガーは長年にわたり、消費者の嗜好を知ることに長けてきた。バフェットは、そうした消費者心理に関する洞察を投資判断にどのように活用したかについて語った。

バフェット:私たちがなぜアップルに大金をつぎ込むことにしたのか、ということについて多くの人が知りたがっています。チャーリーと私が共に多くを学んだのは、消費者行動でした。だからといって、私たちが家具店などを経営できると考えていたわけではありませんが、私たちがボルチモアの家具チェーンを買収したときには多くを学ぶことができました。その買収後、私たちはすぐにそれが失敗であったと気がつきました。しかし、その失敗があったからこそ、私たちは資本配分のプロセスや、人々が将来デパートでどのような行動をとる可能性があるかなど、私たちがそれまでにあまり注目しなかったような、あらゆることを実際に考え抜くことができました。私たちはその失敗から消費者行動について学んだというわけです。デパートの経営方法を学んだわけではありません。

その次がシーズキャンディへの投資で、これも消費者行動を知るには良い経験でした。私たちはキャンディの作り方を知りませんでした。知らないことだらけでしたが、シーズキャンディを観察するにつれ、消費者行動の理解が深まりました。こうした経験が、消費者の心理にアップル製品が与える影響を知る手がかりになったのです。
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翻訳=江津拓哉

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