経営・戦略

2024.05.15 11:00

【バフェットが株主総会で語ったこと1】消費者心理とアップル

心理学者たちはそれを「アパーセプティブ・マス(apperceptive mass)」と呼んでいると思います。自分が過去に行った観察や経験、持っている知識を総動員して、自分の思考を行動につなげるのです。アップルの場合は大きな行動でした。その時、私の心はそのアパーセプティブ・マスというものに達したのでしょう。私はアパーセプティブ・マスについては何も知りませんが、それを身をもって体験したことはわかりました。

前にもこの例を使ったことがあるかもしれませんが、iPhoneを持っていて、かつメインのクルマのほかにもサブのクルマも持っている人に対し、二度とiPhoneを所有することができないか、あるいは二度と車を2台以上所有することができない、という2つの選択肢のどちらを取るかと聞けば、その2台目の車が3万ドルか3万5千ドルもするものだったとしても、多くの人は2台目の車を持つことを諦めるでしょう。消費者が何かを購入するときにそのように考える訳ではありませんが、私たちはそうした消費者の心理について考えを巡らせます。だからこそ、私たちは直観的に決断することができました。

iPhoneの中に人の心を操る小人がいるとでも言うのでしょうか。なぜだかは私もわかりません。でも、それが何を意味するのかはわかります。iPhoneが人々にとってどのような存在であり、どのように使われているのかは理解できます。消費者行動について十分な経験や知識があると思っているので、iPhoneが偉大な製品のひとつであり、もしかしたら史上最高の製品かもしれず、それが人々に与える価値は非常に大きいということがわかるのです。

1950年にガイコを訪問した際、私は実際にそれを目の当たりにしました。(当時のガイコCEO)ロリマー・デビッドソンは、土曜日なのにも関わらず、4時間かけて、自動車保険とは何かについて私に教えてくれました。その前から、私はクルマに関する基礎知識や、自動車保険を買うときに人はどんなことを考えるのかについては理解していました。人々は自動車保険に加入するのが嫌だが、加入しなければ運転できないということも知っていました。しかし、彼はその土曜日の午後、その知識の間に存在した空白をすべて埋めてくれました。もし企業が、良い製品を提供でき、それが他社よりも安く、しかも誰もがそれを買わなければならず、それが大きなビジネスであるなら、それはとても魅力的なビジネスなのです。

コカ・コーラほど世界中でビジネスを展開している企業はありません。約200カ国中170カ国か180カ国ほどで愛飲されているソフトドリンクです。これは数年前の概算数字ですが、これほどまでに世界中の人々に受け入れられることは、大変すばらしいことなのです。
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翻訳=江津拓哉

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