サイエンス

2024.05.06 10:00

流行りの「仕事のゲーム化」の利点と6つの問題点

ゲーム化導入時の注意点

適切なやり方で仕事にゲーム化を導入すれば、従業員の満足度やエンゲージメント、生産性が向上するかもしれない。しかし、次のような基本的要素を見落とさないことが重要だ。

・基本的な労働環境の確保

仕事にゲーム化を導入するからといって、生産的で幸福な職場に欠かせない最低限の基準を満たさなくてもいいということにはならない。適正な賃金や、健康的なワークライフバランス、十分な照明や適切な換気といった労働環境の確保などが必要だ。

・文化的なつながり

前向きで、企業の価値観と整合が取れた統一性のある労働環境は、成長を後押しする。従業員同士が協調的で、共通の目的意識をもっていれば、職場の調和と効力感はいっそう強くなるだろう。

・仕事の意義

心理学に関する学術誌「Frontiers in Psychology」で2018年に発表された研究論文によれば、有意義な仕事とは、より広い目標(パーパス)を内包しており、より優れて合理的な、あるいは社会性のある目標達成に役立つと同時に、仕事における自己実現、自律性、真正性、自己表現を推し進めるという。ゲーム化だけを頼りにすると、より強い目的意識や、有意義な仕事によって得られる帰属意識がないがしろにされる可能性がある。長期的には、中身のないエンゲージメントや、仕事に対する不満につながる危険性もある。

バトラーは、「ゲーム化は、職場が抱える根本的な問題に対処しないまま、意義深い仕事だという幻想を与えてしまう可能性もある。企業が抱える根本的な問題とは、ビデオゲームのインターフェースでは覆い隠すことができない、制度上の問題などを指す」と述べる。

「真に幸福な仕事は人との本物の関係、適正な賃金、しかるべき労働環境を通じてこそ、より良いかたちで実現される。意義深い仕事は、スコアボード上のデジタルアバターや競争などではなく、個人として真に大切にし合える同僚とともに働くことによって生まれるものだ」

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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