いずれにせよ、FPVドローンの製造と戦闘への投入がウクライナ側の優先事項になった結果、それに対する防御がロシア側の優先事項になった。甲羅のような装甲で身を覆い、そこにジャマーの塊もへばりつけた戦車が続々と登場しているのはそのためだ。
この追加装甲が大砲や対戦車ミサイルに対しては何の役にも立たないこと、それどころか、視界や機動性が制限されるためにそうした兵器に対してさらに脆弱になることは、現時点では問題でない。ウクライナ側は数カ月前から大型の弾薬が不足し始めており、大砲や対戦車ミサイルは目下の戦場では大きな危険になっていないからだ。
ロシア軍は最近、歩兵が乗り込む車両などの前に、ジャマーと地雷除去ローラーを装備した亀戦車を走らせ、ウクライナ側の防御線に至る安全なルートを切り開かせるというのを、決まったやり方にしているようだ。
外交政策研究所のリーはロシア軍が「1小隊につき1戦車を、観測と砲塔の回転能力を犠牲にしてでも、FPVドローン用の多くの周波数帯を一度に妨害できる仕様にすることは理にかなう」と指摘する。「(ロシア軍が)優先しているのは、歩兵の突撃部隊に、開けた土地を越えて建物や防御陣地までたどり着かせること」だからだ。
その目的のために、亀戦車はうまく機能しているように見える。少なくとも現在の状況では。だが、ロシア側にとって問題は、その状況が変わりかけていることだ。米国の軍事援助の最初分はそろそろウクライナに着くところだろう。それには数億ドル分の砲弾や対戦車ミサイルも含まれる。今後、ウクライナにさらに多くの砲弾やミサイルが送られるのは確実だ。
FPVドローンは引き続き使われるだろうが、それがウクライナ軍にとって戦場で主要な、ほとんど唯一の武器という状況は間もなく終わる。1kg弱のドローンに加えて、ウクライナ軍が45kgの砲弾や16kgのミサイルを再び撃ち始めれば、鈍足な亀戦車と視界を大きく遮られたその乗員たちは、果たして生き延びられるだろうか。
結果は遠からず明らかになるだろう。
(forbes.com 原文)