ただ、こうした高い能力は第47旅団の2000人規模の将兵にとって、恵みであると同時に呪いでもある。ウクライナ軍の司令部はそれを頼みとして、最も激しい戦闘が行われる場所に第47旅団を配置したがるからだ。
第47旅団はウクライナ軍が2023年6月に始めた反転攻勢で、南部の主力部隊に抜擢された。その後同年10月、ロシア軍がウクライナ東部の都市アウジーウカに攻勢をかけ始めると、第47旅団は南部から東部に転用され、ウクライナ軍の防御拠点だった同市を増強した。結局、アウジーウカからの守備隊の撤退を防ぐことはできなかったものの、それを遅らせることに寄与した。
つまり、第47旅団は1年近くにわたって休まずに戦い続けている。兵士らは疲弊し、保有する最も優れた装備である米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車とM1エイブラムス戦車も不足してきている。第47旅団は休息を必要としている。そして今週、やっとその機会を得られそうだった。
しかし、第47旅団の交代計画はアウジーウカ方面のロシア野戦軍につけ入る隙を与えた。それは、ロシア軍が2022年後半、ウクライナ東部の大都市ハルキウ方面で喫したような大敗北をウクライナ軍に与えられるほどのチャンスだった。
この週末、第47旅団がアウジーウカの北西に位置するオチェレティネ村の東の前線から引き揚げていたとき、ロシア軍はウクライナ側の防御線を攻撃し、突破する寸前までいった。この防御線から西のポクロウシクまでの30kmほどの一帯は無防備なエリアになっている。
第47旅団が抜けたあとは第115独立機械化旅団が引き継ぐことになっていた。だが、何かがおかしかった。第47旅団の有名な中隊長で昨夏の反攻作戦で片足を失ったミコラ・メリニクによれば、第115旅団の「一部の部隊が逃げ出してしまった」のだという。