ただ、当時のネプチューンは全長約5mの本体内に、せいぜい200km飛べる程度の燃料しか搭載していなかった。モスクワを撃沈できたのは、この艦が大胆不敵にもウクライナ沖からわずか100kmの距離、つまりネプチューンの射程に十分収まる範囲を航行していたためでもあった。
実際、モスクワ撃沈後、ロシア海軍の軍艦がウクライナの海岸から遠ざかるようになると、ウクライナ側がそれらを攻撃するのは格段に難しくなった。黒海艦隊の主要停泊地であるクリミア南西部のセバストポリと東部のフェオドシヤ、そしてロシア南部クラスノダール地方のノボロシースクは、ネプチューンで攻撃するのは不可能になった。3カ所のうちウクライナ側の防御線から最も近いセバストポリでも、250km程度は離れているからだ。
そこで、ウクライナの国有企業である国家キーウ設計局「ルーチ」は、射程がもっと長いネプチューンの開発に取りかかった。そうして生まれた「ロング・ネプチューン」(ウクライナのイバン・ハウリリュク国防次官)は、燃料の増量によって航続距離が最大320kmに伸びたほか、シーカーも微調整され地上と海上の目標に対する命中精度が向上した。
ロング・ネプチューンは昨年8月、クリミアのS-400地対空ミサイルシステムに対する攻撃で初めて使われ、S-400を損傷させた。セバストポリに対する今年3月下旬の大規模攻撃でも使用され、軍艦4隻のほか、港湾施設、石油備蓄基地にも損害を与えている。
1カ月後のコムーナに対する今回の攻撃では、老朽化したこの艦に大きな損傷は与えられなかったのかもしれない。だが、現在の戦争が3年目に入るなか、コムーナを含む黒海艦隊の艦艇や関係施設に対して、ネプチューンによる攻撃がさらに続くのはほぼ確実だ。
米議会の関係者らは、ウクライナは今年、ネプチューンの生産数を10倍に増やすと報告している。ウクライナのミサイル攻撃の立案者たちは近いうちにこのミサイルを数十発、ことによると数百発自由に使えるようになるということだ。
たった20〜30発そこらのネプチューンで、巡洋艦を撃沈し、ほかの艦艇数隻や防空システム、支援施設に損害を与えられるのだとすれば、100発のネプチューンがあれば何ができるか想像してみてほしい。
(forbes.com 原文)