紛争の激化や中国の影響力の拡大、急速に進む人工知能(AI)の軍事利用など、好むと好まざるとにかかわらず、世界は戦争の新時代に直面している。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、戦闘が波及する懸念が高まり、NATOによるウクライナへの長期的な軍事支援にも疑問が投げ掛けられている。
1949年のNATO創設以来、武力紛争の絶対数と戦争に関連する死者数は、世界全体で大幅に減少してきた。ところが近年、武力紛争は増加に転じている。英オックスフォード大学らが運営する統計サイト「データで見る私たちの世界」によると、2022年に世界で発生した武力紛争の総数は、1989年以降最多となった。
こうした背景から、NATO加盟国は軒並み国防予算を大幅に引き上げることとなった。NATOによれば、今年、国内総生産(GDP)の2%以上を国防費に充てる加盟国は32カ国中18カ国に上り、2014年のわずか3カ国から大幅に増える見通しだ。
緊張が高まる中、欧州諸国は武器輸入を倍増
従来の国家間の紛争にとどまらず、近年はイスラム主義組織ハマスやイエメンの親イラン武装組織フーシ派のような非国家主体も関与するようになり、紛争の性質が変化している。急速に発展するAIや機械学習技術は、すでにウクライナの無人偵察機のような自律型兵器に利用されているが、今後はサイバー攻撃や物理兵器、生物兵器などにも応用される恐れがあり、懸念を呼んでいる。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告によると、欧州諸国の主要兵器の輸入額は2019~23年にほぼ倍増しているが、これは欧州に限ったことではない。国防予算が世界最大の米国は、2位以下の10カ国の国防費の合計を上回る金額を軍事費に充てており、近年は特に中国の軍事情勢を注視している。中国は今年、国防予算を7.2%増やす計画で、極超音速ミサイルやAIなど、先端技術の開発に力を入れている。