同じ期間にロシアの武器輸出は31%減少し、中国は23%減少したとSIPRIは指摘している。米国以外で輸出が大きく増加したのは、フランス(44%増)、イタリア(45%増)、韓国(74%増)だった。
2022年までの5年間を2017年までの5年間と比較すると、米国の武器輸出の増加幅は14%にとどまっているが、輸出の規模は他国を圧倒している。米国、ロシアに次ぐ第3位の武器輸出国であるフランスは、近年輸出が増加しているとはいえ、世界市場におけるシェアは11%にすぎない。
米国の武器貿易の支配は驚くことではない。40%という米国の市場シェアは、世界の軍事費の39%に相当する。米国防総省が往々にして脅威とみなす中国の世界の軍事費におけるシェアはわずか13%だ。
とはいえ、武器の取引は細部が重要なビジネスだ。市場開拓は複雑だが、それでもバイデン政権は最近の傾向から3つの教訓を得ている。
第1に、ロシアと中国がそれぞれの地域で攻撃的な行動をとることで、近隣諸国が米国製の武器にますます熱視線を送っている。ウクライナは昨年、世界第3位の武器輸入国となり、一方でオーストラリアと日本では米軍の装備品への需要が高まっている。
第2に、これまで米国とマーケットシェアを争ってきたロシアを抑えて、米国が武器貿易の主導権を握る機会がある。米国の政策立案者たちは、ロシアを恒久的に武器貿易の二番手の地位に追いやることを望んでいる。
第3に、同盟国による武器輸出の増加は、米国の武器取引の実行に問題があることを示唆している。特に目につくのが、台湾のような武器を緊急に必要としている国・地域への引き渡しの遅れだ。このような遅延が発生した場合、見込み顧客がフランスや韓国など供給してくれそうな他の国に目を向けるのは当然のことだ。
防衛産業が米政府の新興産業政策にとって必須のものとなっている今、このような遅れは米国の信頼性に対する評判を損ない、米国の雇用を奪う可能性がある。
米国の武器の販売は毎年1000億〜2000億ドル(約15兆〜30兆円)に上り、経済的損失が発生すれば、良きにつけ悪しきにつけ巨額になる。経済の他の分野とは異なり、防衛産業製品の主な需要源は政府であるため、政府はこの分野が自分たちの非効率性によってビジネスを失うことがないよう誘く必要がある。
米国の武器の販売は大きく2種類に分けられる。外国の買い手と米企業が直接やり取りする商業販売が1つ。それから、対外有償軍事援助(FMS)と呼ばれる安全保障を支援するプログラムを通じた政府間の販売だ。
通常、武器取引の大部分を占めるのは直接取引の商業販売だが、FMSは平均年450億ドル(約6兆7150億円)に上り、これは一部の産業の全収益を上回る規模だ。