多くの会議を開き、指導者たちは楽観的な文言を並べた演説を盛んに行ったものの、同国が抱える深刻で多方面にわたる経済の課題についての対策は皆無だった。
そうした課題には、不動産市場を超えて広がっている危機や輸出の低迷、若者の失業、消費マインドの落ち込み、民間企業の投資の鈍化などが含まれる。
中国政府は不動産危機に対処するための実質的な対策をほとんど打ち出していない。当局は不動産危機に端を発した経済・金融問題を数年間放置した後にようやく腰を上げたが、その対応といえば2つの小さなジェスチャーに過ぎない。
2つのジェスチャー
1つは、中国の中央銀行である中国人民銀行が金利をこれまでより大幅に引き下げることだ。奇妙な話だが、両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)でこの約束をした直後、中国人民銀行は会合で金利を据え置くことを決定した。
また、たとえ今後数カ月で利下げが行われるとしても、その効果を疑う理由は十分にある。結局のところ、中国人民銀行は過去2年で5回の利下げを行ったが、にもかかわらず住宅の販売と着工件数は減少し続けており、今年1~2月の住宅販売額は前年同期比33%減、着工は同30%減だった。このような現状を前に、金利引き下げが問題解決の糸口となるのか問うのは当然のことだ。
中国政府は「ホワイトリスト」というプログラムも立ち上げた。地方政府が資金繰りのつかなくなった不動産開発企業を特定し、国有銀行が審査した上で融資を行うというものだ。
これは悪いアイデアではない。小幅な利下げを繰り返すよりも間違いなく効果が期待できる。ただ、危機が発生し、不動産投資の将来や一般的な資金調達に対する信頼がまだ損なわれていなかった2年前に導入していれば、このプログラムはより効果的だっただろう。
このようなプログラムの効果は今のところ限られているが、それは規模が小さすぎるためでもある。これまでにホワイトリストの企業に充当された170億ドル(約2兆5770億円)相当は、恒大集団が2021年に発表した負債総額3000億ドル(約45兆4815億円)のわずか5%強に過ぎなかった。