またもや最高値更新の「金」、不動産危機におびえる中国人投資家が買う

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米国の景気後退リスクが取り沙汰されることもなくなり、S&P500などの株価指数が過去最高を更新、そしてビットコインのようなリスクの高い投資先も史上最高値を記録する中、最古の投資先の1つである金(ゴールド)も、価値を上げ続けている。

金の価格は4月1日、1オンスあたり2223ドルをつけて史上最高値を更新し、年初来で8%高、過去12カ月では13%高を記録した。一方、S&P500は年初来で11%高、過去12カ月では30%高となっている。

直近の金価格上昇の背後にある要因としては、米国を除く各国の経済見通しが芳しくないことが挙げられる。国際通貨基金(IMF)は1月30日の四半期世界経済見通しで、米国の経済成長率を2.1%と予測したが、ドイツや日本、英国など他の先進国の予測成長率は1%を下回り、過去12カ月間における世界の主要株価指数は、香港のハンセン指数が16%安、英国のFTSE100が3.4%高とS&P500を大きく下回っている。

Metals Daily(メタルズ・デイリー)のロス・ノーマンCEOは「直近の金価格上昇の背後には欧米投資家は居ない」とし、金の需要は、不動産危機に対するヘッジを求める中国人投資家に支えられていると述べている。また、米国においては、予想以上のインフレに備える投資家や、株価の急騰に伴いポートフォリオのリバランスを行う投資家、地政学的な不安定さに備える投資家などの存在が、金の高騰の原因とされている。

今後の金の価格を左右するのは米国金利の動向だ。金利の引き下げは、もう一つの安全資産である米国債のリターン低下につながる。UBS Global Wealth Management(UBSグローバル・ウェルス・マネジメント)のソリタ・マルセリは先月発表した顧客向けレターの中で、過去50年間で最高水準の世界各国の中央銀行による金の買い付けと、共和党の大統領候補であるドナルド・トランプが米中間の緊張を高める可能性などが、同社が金に対して強気を維持する理由だと述べていた。

JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)ストラテジストのニコラオス・パニギルツォグロウによれば、世界合計で投資家が保有する金の価値は3.3兆ドルにものぼる。これは投資額全体の約1.4%を占める数字だ。また、UBSによると1月の金出荷の約半分は香港と中国本土向けだった。

FactSet(ファクトセット)のデータによると、過去20年間で金のリターンは422%となり、同期間のS&P500のリターンである588%を下回っている。それでも、金は株式のように配当がないことを考えると、驚くべき上昇だと言えるだろう。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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