アジア

2024.03.20

深刻化する香港の不動産問題、根本的原因は中国政府の締め付け

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香港の不動産市場は2019年まで活況を呈していた。購入を抑制し、需要を減らし、より手頃なものになるよう、当局は税や手数料を課していた。こうした高コストがどのような苦難をもたらしたにせよ、それは香港が居住地として、またビジネスを行う場所としていかに魅力的な都市であるかを示していた。

1997年に中国が英国から香港の主権を引き継いだ後も、中国が「特別行政区」と呼んでいた香港にはそうした魅力が残っていた。外資系の多国籍企業は引き続き香港にオフィスを設け、個人は会社の近くに居を構えた。だが2020年に中国政府はそれまで香港が享受してきた経済活動重視の法制度を転換した。魅力が失われたため、外資系企業は香港から移転し、それにともない多くの有能な人材も香港を後にした。そうした状況を受けて不動産価値も下落した。

中国政府が香港の魅力を消し去ろうとしたのは2019年の動きが初めてではない(不注意であったことは間違いない)。2003年には香港の魅力の1つであった市民や企業の法的保護を奪おうとした。その際、大規模な抗議デモが起こり、政府は「国家安全条例」の撤回を余儀なくされた。2020年にも大規模なデモが発生したが、中国政府は引き下がらなかった。香港国家安全維持法の制定を決め、かなりの警察と軍を動員して香港に強要した。同法が施行されたことで監視が強まり、企業は反発した。

影響は圧倒的だった。香港統計局によると、同法が施行されてから約70万人の中国人が香港を離れた。外国人も香港を後にしたが、それ以上に目立ったのは銀行や海運会社といったグローバル企業の撤退だった。ゴールドマン・サックスやJPモルガンなどの大企業は資産と人材をアジアの他の拠点、主にシンガポールに移した。

香港で事業を展開していた米企業の約40%が2019年に撤退し、まだ香港に残っている外国企業の半数が撤退の意向を示している。香港市場での株式公開などは2020年以降大幅に減少している。カナダの権威あるシンクタンク、マクドナルド・ローリエ研究所のジョン・ハートリーは、中国の回復を遅らせた新型コロナウイルス感染症のパンデミックと、失敗に終わったゼロコロナ政策の影響を考慮しても、香港の人々の現在の1人当たり所得は、中国政府が2020年に香港国家安全維持法を導入しなかった場合より10%ほど低いと推定している。
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翻訳=溝口慈子

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