アジア

2024.03.10

世界の生産拠点として台頭するインド 各国が「脱中国」目指す中

インドの首都ニューデリー近郊ノイダにある工場で、スマートフォンを組み立てる作業員(Miguel Candela/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

インドは価格競争力や豊富な労働力を生かし、さまざまな産業で規模と能力を拡大しており、未来の輸出製造大国として急速に台頭している。米コンサルティング大手ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が報告書で述べた。

航空機製造分野では、米ボーイングがインドからの調達を増やしており、同国に製造施設の設立を検討しているとも言われている。デンマークの風力発電機世界最大手ヴェスタスは、インド南東部のスリペルブデュールに2つの工場を新設した。また、米電気自動車(EV)大手テスラは、インドからの19億ドル(約2800億円)相当の自動車部品の調達を倍増させようとしている。

インドの輸出品では、スマートフォンを含む電子製品が2018年から3倍に増加し、昨年には230億ドル(約3兆4000億円)に達した。同国南西部のカルナタカ州政府は、米アップルのスマートフォン「iPhone」の組み立て世界シェア約70%の台湾フォックスコンが同州への16億7000万ドル(約2460億円)の追加投資を決定したことを明らかにした。また、シンガポールの金融グループ、フィリップキャピタルによると、アップルはインド南東部チェンナイ近郊にあるiPhone工場の年間生産台数を今年中に2000万台に引き上げる意向だ。米金融大手JPモルガンは、アップルが来年までにiPhone製造の25%をインドに移すと予測。アップルの存在によって、競合他社も同国に生産拠点を置くようになっている。

さらに、地政学的な理由からも、多くの企業がインドに拠点を置いている。こうした企業は、中国当局が事業運営に介入することによって引き起こされる供給網の混乱や、同国政府が国内企業への技術移転を求める圧力を回避するため、インドに関心を向けつつあるのだ。米国をはじめ、オーストラリアや韓国、日本、英国の多くの企業が、中国を除いた供給網を築くことで多角化を目指す「チャイナプラスワン」戦略を取ろうとしている。

インドは米国のジョー・バイデン政権が打ち出したインド太平洋経済枠組み(IPEF)の重要国とされているため、米国は昨年上半期、インドにとって最大の貿易相手国となった。この枠組みは、供給網から中国を除外し、他の信頼できる供給国からの調達を促すことを目的とするもの。

2018~22年にかけて、インドの対米輸出は44%拡大し、230億ドル(約3兆3800億円)に達した。特に、自動車部品が65%、機械は70%、半導体は143%と驚異的な伸びを示した。一方、中国の対米輸出はこれら各品目で29%減少した。
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翻訳・編集=安藤清香

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