シンガポール国立大学で経済学を専門とするアミテンドゥ・パリトは米CNBCの取材に対し、国際的な製造拠点となることがインド政府の政策目標だと語った。政府の資本優遇措置は、インドの製造コスト削減の鍵となっている。生産連動型奨励策(PLI)は、経済の主要14部門で総額260億ドル(約3兆8200億円)以上の補助金を企業に提供する。
インド政府はまた、労働力の能力向上に向けた取り組みも行っている。同国の電子情報技術省は、国内にデザインエコシステムを構築するためのセンターオブエクセレンス(CoE)を設立。また、熟練した人材を供給するために、新たな技能開発センターが立ち上げられようとしている。
こうした取り組みが電子機器の生産を押し上げることに成功した一方で、労働集約的な品目である衣料品、宝飾品、水産物、プラスチックの輸出は低迷を続けている。インドでは現在、電子製品輸出の50%近くを携帯電話が占めており、技術製品の多様化が急務となっている。生産品質の低さや急速に進化する技術を生産に取り入れることへの消極性といった問題も依然として存在する。また、インドの国内総生産(GDP)の中に占める製造業の割合はそれほど大きくない。
こうした課題を克服するために、インドは生産能力を拡大する必要がある。中国が日本や韓国、香港、台湾といった近隣諸国の生産能力で補完しながら恩恵を得ているように、インドは向こう数カ月間で、近隣諸国と通商に向けた集団的能力を構築すべきだ。近隣諸国優先政策の下での財政優遇措置は、インドの製造業を南アジア全域に広げるのに役立つだろう。地域貿易を奨励し、近隣のネパールやバングラデシュ、ブータン、スリランカとの供給網を発展させることで、インド政府が掲げる製造業の成長に向けた「メイク・イン・インディア」政策を「メイク・イン・南アジア」に拡大することができる。これにより、2030年までに輸出額を2兆ドル(約294兆円)に引き上げるというインドのナレンドラ・モディ政権の目標達成に向けた勢いを後押しすることになるだろう。
(forbes.com 原文)