アジア

2024.03.20 09:00

深刻化する香港の不動産問題、根本的原因は中国政府の締め付け

こうしたことから香港の不動産が2021年以降、価値の約25%を失ったことは驚くにあたらない。プライマリーマーケット(一次市場)とセカンダリーマーケット(二次市場)における昨年の不動産取引総額は約500億ドル(約7兆4615億円)にとどまり、2019年から30%減少。超高級住宅はこの1年半で価値の4分の1を失った。売れ残りの住戸数は2007年以来の高水準にある。賃料も下落している。賃貸経営における最近の利回りは辛うじて3%だ。不動産への依存度が高い香港の予算も苦しく、2023/2024年度には130億ドル(約1兆9400億円)の赤字となると予想されている。

確かに、中国全体の経済成長ペースの鈍化は香港の不動産市場の苦境にひと役買っている。香港のもう1つの魅力は、急成長する中国経済に地理的に近いことだった。香港ドルと米ドルを連動させるペッグ制により、香港当局は中国人民銀行(PBOC)の利下げではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに従わざるを得ないため、高金利も影響している。だが、どちらも不動産市場の劇的な変化の主な原因ではない。企業にとって、金利政策の変更と中国経済の回復を待つことは容易いことだっただろう。これまではそうしてきた。原因は香港国家安全維持法であり、同法が香港の環境を根本的に変えてしまったことにある。

不動産価格の下落ペースを緩やかにするため、香港当局は10年以上前に価格上昇を抑えるために導入した法律を撤廃した。不動産を購入する非永住者に課していた15%の税は廃止され、既存の住宅所有者への7.5%の税も同様だ。また、購入から2年未満の不動産の転売を抑制するための税も撤廃された。人材流入を促進するためにビザ発行の条件も緩和されている。香港当局がこのような変更を行うのは合理的で、不動産価格の下落ペースを緩やかなものにするかもしれない。だが、こうした措置は一種のパニックを示すものでもある。

さらに悪いことに、中国政府はさらに厳しい香港基本法第23条の立法化を迫っている。この新法は、表向きは外国の政治組織だけを対象にしているが、今のところ起訴したのは香港の住民だけだ。香港がかつて有していた、魅力的な法的保護がなくなって久しい。シンガポールが喜んでいるのは間違いない。シンガポールはいま、香港から流出している企業や人材、富の多くを獲得している。一方、中国の当局は、昔中国に膨大な富をもたらした香港が今後はもう富を生み出さないだろうということに気づいていないか、無関心なようだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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