2024.05.14 09:15

パリも孤島も。都市と地域の価値の循環

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この状況下で、日本の地方都市、もっと言えば「名前も知らないぐらいの地方」というのは非常に魅力的な場所になってきています。そもそも、新幹線が5分おきにほぼ定刻で運行する日本の交通は、30分や1時間の遅延が当たり前の欧州からすれば信じられないもので、欧州からのビジターの移動に同行すると必ず驚かれます。
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また、ほとんどストが起きないことも日本の信頼度を大きく底支えしていて、清潔でサービスが良くデザイン性の高い車内も含めて日本は旅行がしやすいという印象に貢献しています。簡単に言えば、東京まで飛行機で着いてしまえば、日本中どこでも移動できるという安心感が他国に比べて高く担保されているのです。

さて、「名前も知らないぐらいの土地」について、僕がよくする質問があります。それは、「ドイツで3番目に大きい都市はご存知ですか?」というもの。「イタリアは?」「フランスは?」と聞いても日本でほとんど答えられる人はいません。僕は名古屋出身で、日本では名古屋が3番目の都市であると当たり前のように知られていますが、欧米人には知られていないのです。

その延長で話をすると、大きな都市でも、小さな村であっても「まだ知られていない」ことをメリットととらえれば、これからどれだけでもブランディングする伸び代があるということです。
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しかし一歩間違えば、駅前に“顔はめパネル”が並び、海外で大量生産されたキーホルダーを売るお土産屋さんが乱立し、地域の文化や生活との結びつきがない観光優先のブランディングで、その土地の文化や産業の魅力を一気に失ってしまうことにもなりえます。

これは安価なものを売るということだけではなく、海外資本の入った高級路線の街づくりでも起こりうる状況で、地域との結びつきがないリゾート地域が点として突如でき、地域の物価上昇で元々の住民の生活を苦しめるケースも出てきています。ここは魅力と切り取り方が紙一重ということを慎重に考察するべきだと日本を巡る度に感じます。

欧州富裕層が求める日本

最近になり僕らのお客様も世界中から日本を訪れ、東京などの都市を経て有松にまできてくださるケースが増えてきています。もともと僕らのブランドは60%が欧州、15%が北米のマーケットで構成されているのですが、15時間以上も飛行機に乗り、電車に乗り継ぎ地方に来てくれることはとてもありがたいことです。
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文=村瀬弘行

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