2024.05.14 09:15

パリも孤島も。都市と地域の価値の循環

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ドイツから東京に行くと目に飛び込んでくるのはビルが立ち並び、新しい商業施設ができ、いたる所で建設が進む風景です。テクノロジーも積極的に導入され、都心で暮らす人々や海外から日本を訪れる人たちを受け入れる環境が整えられています。ただそこで考えるのは、その先にある未来です。
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毎年仕事でサンフランシスコに行くのですが、シリコンバレーのお膝元、最先端を象徴する街では長年、大手企業の参入が家賃を異常に高騰させ、暮らしも営業も困難となる問題が起きています。いまや街の真ん中にあった商業施設が空き家になり、ゴーストタウンのようになってしまいました。

治安が悪化して警察官の数が足りないため、950ドル(約15万円)以下の万引きは逮捕しない方針となり、店舗での窃盗が相次ぎません。コロナ前には空き家になっていたところにヨガ教室などアクティビティーをする場所もありましたが、コロナが終わって行ってみると治安の悪化からか、オンラインの普及からか、また空き家になっていました。

昔からサンフランシスコに暮らしている現地の富裕層と話をしていると、彼らが求めているものはよりヒューマニティーに触れられるもの、心を落ち着けられる場所や経験だと気づきます。情報過多な時代に生まれたZ世代もそのような視点を持っているように感じます。フェイクニュースではなく目の前にいる人と話し触れ合い、正しいものを判別するのです。
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ファッション産業で言えば、これまでほとんどのデザイナーやブランドがパリを目指し、華やかなショーをすることをステイタスかつゴールとして動いてきました。しかし、スワイプひとつでパリのショーから地方の村や孤島の暮らしに移動できる今、その価値はイコールになっているように感じます。

そのなかで、地方は保護するものではなく、新しい価値を持った魅力のある場所としてこれからの時代に映るだろうと、パリのラグジュアリーブランドの真ん中にいるデザイナーが常滑のろくろを回す職人さんと楽しそうに話をしている姿を見て感じていました。
常滑焼の職人、伊藤成二さんの工房へ。ろくろを回すのはロエベのデザイナーElizabeth Cellhayさん。

常滑焼の職人、伊藤成二さんの工房へ。ろくろを回すのはロエベのデザイナーElizabeth Cellhayさん。

文=村瀬弘行

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