長期的には、同社はさらに大きな野望を抱いている。「最終的に、免疫抑制を必要としない臓器をブタで作る」とカーティス。つまり、移植を受ける患者は拒絶反応を防ぐために免疫抑制薬を服用しなくてもよくなるかもしれないということだ。これは患者の生命を維持する一方で、感染症やがんのリスクを高めることになる。「実現するためにはさらなる遺伝子改変が必要になることは承知だが、それがどのようなものかを知るためには人間のデータが必要だ」とカーティスは話した。
チャーチは、移植患者が薬を服用しなくてもいい臓器に加えて、遺伝子工学の力を用いて同社がいつの日か 「強化された臓器」を作り出す可能性があることを意味しているとも語った。例えば、ブタのゲノムに手を加えて「複数の病原菌に耐性を持つ臓器」や「老化の遅い臓器」を作ることができるかもしれないという。概念の証明として、チャーチはハーバード大学医学部の自身のラボでの研究を挙げた。ネイチャーに掲載され、査読を受けたこの研究は、シンプルな遺伝子操作で細菌種が既知のあらゆるウイルスに耐性を持つようになったことを報告した。「今、私たちはそれをブタでやりたいと思っている」とチャーチは語った。
差し当たっては、eGenesisは事業規模を拡大する必要があり、そのためにはより多くの資本が必要になるとカーティス。同社は2026年末まで事業を継続するのに十分な資金を確保済みで、追加資金を調達しているところだという。カーティスは、今回の手術の成功が潜在的な投資家に同社の事業が順調であることを示してくれることを期待している。
「世界初の生きている人へのブタの腎臓の移植は、我々のアプローチ全体の有効性を証明するものだ」とカーティス。「そして、腎臓だけでなく、肝臓や心臓の移植も並行して進めることができるようになる」と話した。
(forbes.com 原文)