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2024.03.18 10:30

人生の約6年8カ月を費やす「ソーシャルメディアへの執着」から脱するためには

安井克至
別の研究では、インスタグラムを利用する若者の脳活動がどのように変化するかが示された。この研究は数年前のものだが、現在でも十分通用する。研究で「リスキー」と呼ばれる写真(例えば興奮させるような服装が写っているなど)を見ると、自制心に関係する脳の特定の領域が機能しなくなるという。悲観的な情報を延々と追う「ドゥームスクローリング」の科学的証拠を発見したかのようだ。

悲しいことに、私たちはそうした警告に注意を払っていなかったと思う。行動を変えておらず、アプリは私たちを損ない続けている。議員らは確かに注意喚起しようとしている。だが、英デジタルマーケティング会社のスマートインサイトによると、私たちのスマホ使用時間は増えている。ソーシャルメディアの利用は1年前より8%増えたという。

私たちはドゥームスクロール的な思考をするようになりつつある。スクロールし続けるため、他のことに注意を払わない。思考は半分だけ機能しているという中途半端な状態だ。スマホに気をとられて周囲の人に意識を向けない(ファビングとして知られる)ことは日常になっている。

筆者が尊敬する2人の米国の作家がともにこのテーマについて書いている。ジョン・エルドリッジとニコラス・カーは、私たちが無益なことにあまりに多くの時間を費やしているとしてソーシャルメディアとウェブを批判している。私たちは次から次へとコンテンツをクリックし、いつも上の空だ。英国の作家C.S.ルイスは昔、地獄で耳にするのは雑音ばかりと書いた。私たちはすでにそのような現実の中に生きていると思う。私たちは雑音に満ちたどん底におり、雑音にまみれ、雑音を受け入れている。そうすることを自ら選んでいる。

とある作家が書いたように、ソーシャルメディアはうまく私たちの注意をひいているため、私たちは注意をそらすことを選んでいるというのが本当のところだ。ソーシャルメディアは一時的で重大な意味を持たず、しかも効果的であるため、私たちを損なっている。これは致命的な組み合わせだ。暮らしにおいて、スマホほど手ばやく完全に、しかも労力を費やすことなく私たちを夢中にさせるものはそうはない。

だが、大事なことは常に努力を必要とする。つまり、私たちは悪循環に陥っている。多くのストレスや不安を抱えているために、それらを軽減するために最も簡単で効果的な方法を選ぶ。一方で、有意義な活動をしていないため、実際にはストレスをさらに抱え、もっと多くのストレス解消が必要になる。これは負のスパイラルであり、ソーシャルメディアアプリは負の方向へと引きずり込んでいる。

私たちがこの負のスパイラルに陥っていることに気づくことが、最終的にスマホを使う時間を減らすための第一歩だと主張したい。気づかなければ、アプリに330万分間を費やすことになる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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