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2024.03.18

人生の約6年8カ月を費やす「ソーシャルメディアへの執着」から脱するためには

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ゾンビたちと話していた。実際のゾンビではない。目を合わせる代わりに、手にしている携帯電話の小さく光る画面を見つめている若者たちだ。彼らは話を聴きながら画面をスクロールしていた。ほとんどがTikTokやインスタグラムといったソーシャルメディアアプリを使っており、狂ったようにクリック、スクロール、スワイプを繰り返していた。

筆者は彼らに最近耳にした興味深い統計の話をした。10歳前後でソーシャルメディアを使い始めると、人生の約6年8カ月をソーシャルメディアに費やすことになるのだという。高齢まで生きるとしたら340万分間だ。

若者たちは、ちらりと目を上げすらしなかった。

筆者は2020年からフォーブスでソーシャルメディアについて書いているが、以来ソーシャルメディアアプリの私たちの脳への影響について考えるようになった。

このテーマに関しては、ソーシャルメディアの使用量を減らした方がいいと思わせるような、説得力のある科学的な研究があるかと思うかもしれない。だが、研究は私たちにあまり影響を与えていないと思われる。私たちはデータもスルーしているようだ。その理由は、ソーシャルメディアアプリに関係しているか、頑なに事実を認めようとしていないためとしか考えられない。

1日中アプリに夢中になっているという意味でのソーシャルメディアへの執着は、スマートフォンが出回り始めてからずっと後の2014年頃から始まった。それ以前は、喫茶店に入るための列に並んでいる間に携帯電話を使用する人はいなかったし、使っていてもたまにだったのを筆者は覚えている。

スマホのカメラの性能が大幅に向上し、通信速度もずいぶん速くなって、スマホは私たちをひきつけるようになった。私たちの手に常にスマホがあるようになったのは、ソーシャルメディアが台頭し始めたここ10年ほどのことで、TikTokが登場したのは2016年だ。今年初めに発表された米シンクタンクのピュー研究所の調査によると、このごろではおおよそ半数の人がインスタグラムを使用している。2014年時点のその割合は25%以下だった。

ソーシャルメディアの使用について考えさせられるような研究がいくつかある。専門誌『JAMA Psychiatry』に掲載された論文によると、1日3時間ソーシャルメディアを使用すると、メンタルヘルスの問題を抱える可能性があるこという。また、『JAMA Pediatrics』に掲載された最近の研究結果では、ソーシャルメディアは報酬と罰に対する感受性を脳内で生み出すことがあることがわかった。つまり、私たちは昔よりも小さな褒美を切望したり「いいね!」やコメントをチェックしたりする傾向があるということだ。
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翻訳=溝口慈子

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