1. 問いを炙り出す
2. ドメインを越境する
3. 軋轢を原動力にする
4. 方法や理論を生み出す
一つ目は問いを炙り出すことだ。以前は社会課題をどう解決するかを起点に、ビジネスを組み立てることが主流だった。ところが近年、先に述べられたような複雑な時代背景の中、そもそもの問いを炙り出すことが必要となった。そうしたアプローチには、人文社会学の批評的な態度が役に立つのではないかと筧は説く。
「未来を思考する際、楽観的に明るい理想を想像することも大切ですが、果たしてそれで良いんだっけ? という視座を持たないと、何を作っていいのか分からない時代になっています。一方で批評ばかりしていると、そこからどう動いていいのか道筋が立てられない。批評的な精神を持ちながら、具体的にクリエイティブなアクションを取ることが大切です。
また、それらを個人の中でも、チームでも行き来することによって、新しい価値が生み出されます。そういった背景もありCFIでは、人文社会系との連携を密にして、批評的アプローチを推奨しています」
昨今、ソニーやGAFAMなどのビッグテックが、文化人類学者や哲学者などの人文社会系の人材を登用している。それには上記のような背景もあるのであろう。
問いを炙り出した後は、実証だけではなく、実装まで踏み込んでいくことが重要。その際にポイントとなるのが越境だ。その力を養うのにアート思考が役立つと筧は説く。
「アート思考というと内発的な動機による創造性という解釈があり、それはそれで大切なのですが、アーティストは内発的なものだけではなく、社会や人々、環境など外部への思考を深め、その関係性の中でメッセージを構築していきます。
内と外をいったり来たりしながら、問いを炙り出して表現するので、まさに越境的な思考力が養われます。さらにアート思考によって定めた思考を、共有可能なものに集約していく作業にはデザイン思考が有効です」
生成AIが飛躍的に進化する中、うまく使いこなして職種を越境していくことが、今後のビジネスパーソンには求められる。その際にどのような視点で選び、どのようにプレゼンテーションしていくのかという、ベースとなる思考や視点を鍛えることが重要となる。アートやデザイン思考は、そうした思考の土台を作るためにも有用だ。