リーダーシップ

2024.03.13 14:30

未来からの「問い」にあなたはどう答えるか

谷本有香|Forbes JAPAN Web編集長

谷本有香|Forbes JAPAN Web編集長

「Forbes JAPAN」2024年3月号「新しいリーダーを語ろう」特集、そしてその冒頭の座談会企画の意図とは何か。本特集のデスクであり、座談会の企画者でもある谷本有香がその意図を語る。


私たちは今、時代の転換点に立っている。AI(人工知能)の民主化、「人間」や「企業」から主語が「地球」に移行する経済。考え方も前提も、すべて従前とは異なった「未踏の地」を開拓していく私たちに今、必要なものとは何なのか──。この解は、恐らくかつてのようなひとつの答えではないだろう。むしろ、答えは見つからず、探求し続けること、それこそが答えなのかもしれない。

禅に「答えは問処(もんしょ)に在り」という言葉がある。解を求めようとするならば、その解を欲するきっかけとなった「問い」に答えや問題の核心があるという意である。ならば、解を求める探訪の旅に、私たちはどのような「問い」を携えていけばよいのか。それを求めるべく、霊長類学者、僧侶、工学博士、そして経営者による「未来会議」を開いた。あえて世界を見る時間軸も視点も異なる識者を集めてみたのだ。
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思考を互いに交差させることで見えてきたのは、「問うこと」の真の意味である。「問」という漢字の成り立ちは、神を祀る神殿で祈りを捧げ、その神意を伺うことだという。人事を尽くし、あとは天意を待つという姿勢は、わかりやすい数式のような因果ではない。

けれど、さまざまな縁(えにし)が関与することで、私たち人間が想像もつかないような「進むべき道」が見つかるかもしれない。それこそが「問い」の真意なのではないか。実はこれは、アートの世界でも重なると思った経験がある。

「すでに未来に生きている」

世界屈指の美術館とうたわれるスペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館のキュレーター、マヌエル・シラウキ氏にインタビューした時のことだ。ビルバオの地を変革させたきっかけとなり、その中心となった美術館をリードし、まさに地域社会に多大なる影響を与えた人物である。彼はこう言った。「突然訪れる予期せぬ変化のなかで、新しい世界とのつながり方や理解の仕方を提示してくれるのが創造性であり、アートなのである」。

未知の世界との出会いは必ずしも、テキストやクエスチョンのような表現だけで訪れるわけではない。アートはときに「問題提起だ」と指摘される。そして、それは鑑賞者の解釈や時代を超えて、創作者の意図とは全く違う形で、その時々の解を指し示す。アートはこのようにして、自身が見えるものや感じたことなどを手がかりとし、作品に向き合い、考えることが求められる。世間や時代に「問う」という表し方なのだろう。

彼が指摘してくれた、もうひとつ忘れられぬ一言がある。それが、「私たちはすでに未来に生きている」という言葉だ。

「未来は誰かひとりの思いや、何かひとつの考え方や未来像でできているものではない。どういった世界をつくっていくべきか、集団の知恵で共創していく。そのために、多様性あふれる人たちと、インクルーシブな対話をもっと設けていく必要がある」

つまり、未だ見ぬ未来をつくるのは、今の私たち一人ひとりの「意思」そのもの。私たちの「意思」、すなわち、私たちが未来にはせる思いこそが原因や因縁となって、未来という「果」を生むのである。気構えや姿勢を貫くことで、それぞれの選択とアクションにつながり、積み重ねとして未来がつくられる。
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文=谷本有香

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